私は確かにあの子を信じていないかもしれないが、愛している。
なぜ Lは息子をああまで疑うのだろう。
「状況的な証拠がたまたま月くんに当てはまってしまっている、ただそれだけのことですよ。
Lはあのとおりの性格ですから、疑うならとことんまで試すんでしょう。」
松田はつとめて明るく言う。
時に危なっかしく感じるときもあるが、この男の どこまでも陽性の気質は得がたいものだ。
人をして信頼したいと思わせる。人としてのあたたかさや温もりの類を持っている男。太陽のように周りを照らし出す明るさ。
(… 月 とは反対に。)
親として この事を認めなければならないのは辛いけれど。
あの子は冷たいのだ。例えて言えば 真昼の月のように。孤立した冷たさ。何にも属さない、関わらない、働きかけない類の。
「何言ってるんですか。月くんはものすごく優しい、よく出来た息子さんじゃないですか。僕なんかよりずっと頭がいいし、気が利くし。」
…そうだな。あの子は昔から頭がいい。成績はトップで、スポーツもできる。人望も厚いらしい。
あの子はよく出来た子だ。いや、むしろ…出来すぎているくらいに。
でも私は、あの子がどんな本を読むのか知らない。
どんな友人が居るのか どんな女の子が好きなのか 休日は何をして過ごしているのか 知らない。
今更のように愕然とする、私は 何も。あの子の何も、知ってはいない。
「僕は、月くんを信じてますよ!」
松田、それは違う。
お前は、月を信じているのではなく 「私の息子」という表象を信じているのだ。
つまりは私を。
そして
私 は?
眼を閉じて思い浮かぶあの子の顔は何故か頑是無い幼児の頃のものばかりで私は。
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あの子が何であろうと私の息子である限り、私は。
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