*現段階では一応捜査本部(Lビル)で捜査が続いている状況で二月を迎えたと仮定しました。

*黒月です。死神についてはいろいろと面倒なので視点を省略。
*もうなんかめんどいこと全部省略。 
*つまり本質的にパラレル。











ラドキシカルバレンタイン






 二月十四日。



 いまや捜査本部の中心となってしまっているモニター室は元から人が少なかったが、
 夕方にかけては それぞれ捜査やら休養やら、ことさらに閑散としている。

「じゃ、ぼくも一旦部屋に戻るよ。」
 書類などの荷物をまとめ 立ち上がった月を、Lは呼び止めた。

「月くん。」
「ん?」

 振り返った月に、Lは にょきりと手を差し出した。
 月は整った眉を僅かにひそめ、困惑の表情を作る。

「…何、この手は。」
「下さい。
「はあ?」
「日本では二月十四日は好きな人へチョコを送る日だと聞きました。下さい。」


「…お前のことだから知ってて言ってるとは思うが、、、…チョコは普通女の子から男の子に送るんだよ。」

「勿論です。」
 Lは平然と答えた。

「しかし、そこに抱えてらっしゃるそれは。」
 Lの指差す先には、確かにピンク色のラッピングも華々しい箱があった。

「これは今日、ミサから貰ったんだ。悪いけど、竜崎のじゃないよ。」
 残念だったね…、と言いかける月に、Lはふうと嘆息した。

「そうですか。」

 あれ。珍しく、意外にあっさり引き下がったな…そう思う月に、Lは言った。

「仕方ありませんね。じゃあそれで我慢します。」

「………・・お前…、話聞いてたのか??……・」
「はあ。聴力には自信がありますが…。」
「…そうじゃなくて、だな…。」

 脱力する月に、Lは言った。

「この際どのような形で頂いたかは問いません。
 ようは本日中に月くんからチョコをもらうということが重要なのです。」

「どういうことだ?」

 いぶかしげな月に、Lは宣言する。
「月くんが今日中に私にチョコを下されば、
 月くんは私に好意の意思を表明したということになりますから!」

「それ、何かいろいろ間違ってるだろ明らかに!」
「間違ってません。愛する人にチョコを送る=チョコを送られたらその人に愛されている
 ということです。」

「理屈ではそうなるけどさ…」
「判っていただけましたか…じゃ、下さい。」
「ダ・メ・だ!」

「…そうですか…」
 Lは手を引っ込め…、親指を噛んだ。

「残念です…月くんの自由意志にお任せしようと思っていたのですが…やり方を変えることにします

 Lがぱちりと指を鳴らすと、アイバーが現れた。


「アイバーさん!?」
「おじゃましていますよ。」
 アイバーはいたずらっぽく片目をつぶった。


「ふふ、何を隠そうアイバーは…」
 語り始めるLには目もくれず、月は親しげにアイバーに握手を求め、話しかける。

「いつからいらしてたんですか?」
「さっき、成田からやってきたばかりさ。モナコで一仕事していたのだが、Lに呼ばれてね。
 ライトくんは元気かい?ミスター夜神や他の人たちは?」
「おかげさまで。」
 アイバーも月の肩に触れ、二人はいかにも親しげにあれこれ世間話を始めた。


「………・アイバー、月くんの半径6357キロメートル以内から立ち退いてください。」
「…私は 地 球 追 放 ですか?」
「いいじゃないか、竜崎。せっかく遠いところをはるばるやってきてくれたのに。」

 
「ふふ…そんなことを言ってられるのも今のうちですよ月くん…!
 アイバーは詐欺師としてあらゆる交際術はおろか、催眠術の心得もあるのです!」

「…だから何?」

「さぁアイバー!催眠術で月くんにLにチョコレートをあげたい』と暗示をかけるのです!!」

チョコほしさに催眠術かけるか!!!
 てか、そのためだけにモナコからわざわざアイバーさん呼んだのかお前!?」

「ご苦労ですアイバー(あっさり)。ではさっそくですがお願いします」
「ちょ…、本気ですかアイバーさん!?」
「…気は進まないが、Lに頼まれてはね。」

 本当に気が進まなそうなアイバーを見て、月は直感的に危険を察知した。


 やばい。逃げなくては…!


 くるりと後ろを向き、走り出そうとした矢先 誰かにどん、と突き当たる。


「わっ!松田さん!」
 そこに居たのは松田だった。

「た、助けてください…!」
 わらをも掴む思いで松田に訴えるが、松田は答えず むず、と月の腕を掴んだ。


「松田さん…?」
 後ろからのんきそうなアイバーの声が聞こえる。
「ああ、ミスター・マツダには先ほど催眠術の 実 験 台 になっていただいたよ。」

「ええ…!」

 そ、そんな…!確かに少しぼんやりしてるし、顔にしまりが無いけれど…!


「・・・
いつもの松田さんと変わってないような・・・」

「よく観察してみればわかりますよ。」


 そういえば、なにやらぶつぶつ呟いている。


「ボクハセイギノミカタ…ボクハ…マツダマン…!!!」


「…何かヤバいんですけど!!これ本当に催眠術だけですかーーーーー!!!?」

 アイバーがやれやれと肩をすくめる。
「いやぁ、単純な人間ほどかかりやすいというが、ここまでかかりやすいヒトにあったのは初めてでしたね。」

「ちょ…松田さん!馬鹿にされてますよ!オーイ!」

 しかし松田はまったく正気に返る様子は無かった…

「くっ…!松田(さん)の単純馬鹿め…!!
「すみませんね、ライトくん。」




 近づくアイバーを、月は見上げた…




***




 数時間後。



「遅かったですね、アイバー。」
「はぁ、…どうもやりにくくて。」
「月くんは…」
「ここだよ竜崎。」

 月は手に白い包装紙でラッピングされた小さな箱を持ち、恥じらいながら進み出た。

「竜崎…すまなかったな…僕がどうかしてたんだ、おまえにチョコをあげないなんて…」
「月くん…」
「これ、ぼくの好意として…受け取ってもらえるか?」
「もちろんです!!」
 Lは箱ごと月の手をそっと包み込んだ。二人の視線が合わさる。

「…食べてくれるかい?一生懸命作ったんだ…」
「手作りですか、有難うございます。」

 あーーーーん。

 見た目も可愛らしいハートをかたどったチョコレートを、Lは口に運んだ。


「・・・うっ!?」


 しかし、Lは突然口を押さえて苦しみ出した。
 アイバーがはっ、と月を見る。


「…毒を入れたのか、ライトくん…!?」
「まさか。僕は何も入れてないよ?文字通り、何 も ね 。

 がくぅ!堪えきれず、Lは床にひざを着く。


「…に…苦い!!!!!!」


 Lはあまりの苦さになみだ目になっていた…
「さ、殺人的な苦さです…っ!これは…!!!?」


「…竜崎、チョコが甘いなんて誰が決めた
 甘いのは砂糖が甘いんだ。チョコレートの原料であるカカオは、もともと苦いだろ?」

 ふふ…と冷笑してLを見下ろす月が涙で歪む…

 ああ…月くん、あなたって人はやはり…
 やはり…




***




う・・・う、う〜、ううう、う〜〜〜・・・

「あーこりゃあ大分イヤな夢を見てるみたいですね…;」

「自業自得です。」
 月はつんと顔を背けた。Lを見るのも嫌らしい。

「それより、頼みを聞いてくださって有難うございました。」 
「いや…まぁ、ライトくんに暗示をかけるより、Lのほうがやりやすかったし・・・


 嫌がっている相手にかけるより、そういった何かしらの願望を持っている人間に暗示をかけるほうがはるかに楽である。
 月は、もともと気乗りしていなかったアイバーに向かって 「Lに催眠術をかけてくれ」 と 頼んだのであった…


 うなされる竜崎を眺めつつ、二人は今、ミサからもらったスイスの最高級チョコレートを賞味しているところだった。
 
「そういえば、ライトくん。」

 アイバーはふと思いついたように 言った。

「もらったチョコレートでも何でも、とりあえず与えておけばLは黙ったと思いますが…?」

「そ、それは…」

 それは…ダメだ。
 間接とはいえ、ミサからあいつにチョコをやることになるじゃないか。


 とは、


 言えなかった。












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 どうしても月からもらいたかったらしいL。自分からはあげようとしないくせにLに誰かのチョコが渡るのも許せない月。
 意地っ張りたちの砂糖抜きのバレンタインですいません。。
 そしてアイバー…アイバー特技増やしてごめん…!
 








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