人間の味覚の中でも 苦味というのは一番最後に作られるのだと、どこかで聞いた。
 
 幾つもの味覚を味わうため 複雑に発達した 人間の  舌。
 毒を喰らわぬよう、酸味も苦味も 噛み分ける。






       移不味かめてしまうほどに
                                          











 目の前の男はきっと、味覚形成において重要な時期を逸してしてしまったに相違ない。
 それくらいむちゃくちゃに甘いものを貪る、まるで自分は甘み以外の味覚は不必要だとも言うように。


「何ですか」
「…いや…よく食べるなあと思って。」

 そう言って僕はコーヒーを飲む。
 ミルクも入っていないそれは、少しほろ苦いけれど 僕はその味を楽しむ術を心得ている。


 何故 彼はこの味を解さないのか、思いをめぐらせる。


 母親や周囲の人物が気をつけなかったのか。
 姿勢やペンの持ち方や、この男に関して 成長過程を想像するのは困難だ。
 そもそも母親なんて居るのだろうか。

 家族は。
 友人は。
 幼児期における信頼関係の形成は。


 男はむくりと顔を上げ、僕の視線を受け止めると 首を傾げた。


「…欲しいですか?」
「いや。遠慮しとくよ。」





                   苺は とっておきなんだろう?






 …こうして 日々この男に関して本当に知りたいこと以外の知識が増えてゆく、次第に親しいものとなりゆく。

  それも悪くない と 思ってしまう僕は  





                                            きっとこの男にされているのだろう。








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 喰らったのか喰らわれたのか…






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