喪い続け手に入れ続ける世界のこと。










雨上がりの道で、転んだ。



いつになくぼんやり歩いているからだと死神は笑った。
人の不幸を笑うのは失礼ではないかと思ってもみたが考えてみればこの死神はいつも全てを嘲っているのだった。



 子供みたいだと思いながらいつまで経っても地面から起き上がれない。

だるかった。
意識が浮遊しているかのように何もかもが遠い。



 そもそもどうしてこんなことになってしまったのだろう僕は、


 僕は、
 雨のにおいが好きで、
 濡れた黒いアスファルトが好きで、
 そこに映る空が好きで、


 それでもいつもは好ましいものだというくらいなのに今日はやけに気にせずにはいられなくて、


 転んだ瞬間の天地が鮮やかすぎてぼくの胸にいつまでも残っているのだ。
 もういちどあの光景を見たい。あの世界を見たい。





                           それはうしなったせかい?
                           これからてにいれるせかい?          



 のろのろと起き上がるぼくは泥だらけで、血の流れる腕を見ても痛みすら覚えない。
 ぼくは無様だった、この上なく無様だった。




 と笑いがこみあげる。

 ああもうぼくには




 みも
 
 すら


 無い……………





                 ……………何も無い、何もかもない、何もかも失くしてそれでもぼくは立ち上がる、歩く、


                         そ れ し か な い ん だ 。












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 喪ったものが多すぎて何かせずにはいられないんだ、
 喪ったものの代わりに何かせめて手に入れたいんだ。





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