*このお話は、手錠後・白月仕様となっております
           *ミサとLがわりと黒いです。
           *相変わらず松田がかわいそうです。







         〜Trouble・Note編〜










 竜崎は悩んでいた。












「どうした竜崎、元気ないな。甘いものが足りないのか?」
 月はホラおやつだぞー、とケーキを差し出した。

「…別に甘いものが欲しいわけでもないんですけど」


「珍しいですねー竜崎!じゃあこれはぼくが…ッ」
 台詞も半ばにぐさり、とフォークで手を刺された松田は、ぎょぇえと何とも形容しがたい悲鳴を上げた。

しかし月くんの心づくしを無視するわけにはいきませんからコレはありがたく頂きます

「…竜崎、どうした?」
「…」

 竜崎は(血染めの)フォークを操りながら、恨めしそうに月を見て呟いた。

「遠いんです」

「は?」
 月はきょとん、とした顔で竜崎を見た。


「月くんが遠いんです」

これ以上無いってくらい近くに居ると思うけど…」

 月はじゃら、と鎖を持ち上げた。

「物理的な距離じゃないんです。なんていうか、こう…精神的な距離というか…」
 はあああ、と竜崎がため息をつく。

「???よくわからないが…お前のテンションが下がると、皆もやりにくいぞ。元気出せ」
「…はい。このままでは捜査本部の士気に関わります。それで私、考えたのですが

 竜崎はごそごそと一冊のノートを取り出し、月に突きつけた。

「月くん、私と交換日記しましょう」
「…はあ??」

 こうかんにっきVという丸文字にピンク色のファンシーな装丁のノートに、月は顔をしかめた。というかヒいた。
 しかしさすがに白月、一応尋ねてみる。

「…お前、交換日記ってどんなものかわかってるのか?」

もちろんです。交換日記とは己の日常生活を主体的に筆記し相手に感想を求める
 ナラティブ(語りの)・コミュニケーションのことでしょう」


「…まあ…間違っては…いないが…」


「日記ブログが流行している事実に示されるごとく、日記とはもはやプライベートなものに留まらず、
 いわゆるひとつのコミュニケーションツールなのです!」


「そりゃ、まあ…」

でしょう?さあさあ、納得したならば速やかにこのノートを受け取ってください♪」
「…うーん…」

 月はためらった。

「わかった」
えっV
 顔を輝かせる竜崎は、次の台詞に凍りついた。

「ただし、コミュニケーションというのならぼくと竜崎だけでなく、捜査本部の全体で回すことにする!!」
え・・・・・・・
「交換日記なんて複数居なきゃ面白くもなんとも無いだろ。それからその悪趣味なノートも止めるからな!」


 そのノートはワタリが心を込めて峻別してきてくれた選ばれしノートだったのに…、とか、
 月と自分の間だけをハイスピードで行き来させようと目論んでいたのに…、

 とかいう竜崎の熱い想いは、現実という大洋の彼方にはかなく消え去ったのであった。












 〜松田の日記〜

 8月18日  晴れ

 懐かしいね〜、交換日記!
 昔よくやったけど、いっつもぼくで止まって、皆に怒られたもんだよ。

 ちなみにこの日記も渡されてから一週間以上経ってるんだけどね(笑)
 
 いまだに日誌とか書類の提出も忘れるくらいだもんね。

 アレ?これ局長も読むんだっけ?ヤバ!今の無し!って、ボールペンで書いちゃったよ。

 うわ〜局長怒るかな?

 話題を変えようっと。


 この前竜崎のパソコンのデスクトップ画像が月くんの高校時代の制服コレクションになってたんですが、
 あれどうやって撮ったんですか?あ、もしかしてったんですか?なーんてね。あはは。







 〜ミサの日記〜

 8月19日 晴れ

 え、何、交換日記??やったね♪♪ミサこ→ゆ→のチョ→好きV
 でもホントはライトとふたりっきりでらぶらぶ交換日記したかったナ…。。。
 今日はライトのことばっかり考えててNGをいっぱい出しちゃったV
 えっとね、ライトはぁ、今度のデートにはいてく下着、ナニイロがいい?
 やっぱ、黒が色っぽいよね☆それとも
はかないほうがいい?な→んちゃってVV
 ミサミサってば、ちょっぴり
ダ・イ・タ・ンV

 ていうかりゅうざきさんマジ、
キモすぎ。イタすぎ。て ゆ→か犯罪?
 
そろそろ、

 ナメたマネもたいがいにせえやホモ野郎キモいんじゃコラ

 とかゆっちゃうカモ☆エヘ☆

 今日はココまでV


                       月あいしてるV





 〜総一郎の日記〜

 8月20日 晴れ時々雷雨

 実は交換日記というものは初めてやるので勝手がよく判らない。
 前のふたりを参考にしようとも思ったのだが…、果たして参考にしていいものかどうなのか…
 とりあえず日記というからにはさしずめ本日あったことを書かねばならないのだと思っていたのだが、
 そうではないのか?

 とりあえず松田、お前が見たモノとお前の勤務態度に付いて今度じっくり話がある。





 模木の日記〜

 
8月23日 くもり

 クリップが切れていたので補充しておきました。






 〜月の日記〜

 8月21日 晴れ時々曇り

 今日は、講義があったので午前中は大学へ行ってきた。
 一般教養の講義テクストにウェーバーの『職業としての政治』を扱うのはどうかと思う。
 一般教養だからこそなのか?

 ミサへ   女の子がそんなことを公然と日記に書いたりするのは良くないよ。

 父さんへ  父さんの日記についての概念は正しいと思う。
        少なくともぼくは日記というものはそうあるべきだと信じている。

 模木さんへ 連絡帳みたいですね。

 竜崎へ   その画像を破棄するか、PCごとぼくに破壊されるか、どっちがいい?





 〜Lの日記〜

 8月22日 雨

 とりあえず松田…じゃなくて松田さん、ノートが来るのが異常に遅かった原因はあなただったんですね
 
 まあそれは一億歩譲ったとしても…、誰がミサさんにまで回せと指示しましたか。
 
 あと私、(笑)とか使う人を見るとじわじわと鈍器でメッタ殴りしたくなる衝動に駆られるので

 夜道の背後は気をつけてください。

 そしてミサさん。

 そもそも私が月くんとのコミュニケーションにと発案した交換日記に、何個人的な愛憎を吐露しているんですか。

 言いたかないですがあなたの無知で無教養でおまけに下劣な文字列を見ていると殺意の前に頭痛がしますああ申し訳ありません、漢字を使っては解読が不可能かもしれませんね読まなくていいですむしろ今後一切書かなくていいです 参 加 不 要 。


 ときに月くんは如何様な下着がお好みなのでしょうか?
 月くんの御要望とあらば可能な限りを持って応えますのでご安心を。


 追記/『職業としての政治』は、マキャベリの『君主論』と比較してみるとおもしろいですよ。

 追記2/そして画像についてですが、何のことやらさっぱりわかりません。
    大方松田さんの妄想だったのではないでしょうか?
    いくら月くんの高校時代、紺色ジャージの下に隠れるのびやかな肢体を思い描いていたとしても、

    願望と現実を混同してはいけませんよ松田さん。










「………」

 不幸にも最後にノートを手にすることとなった相沢は、ノートを眺めながら 思った。


 
このノートは、争いを招く…!


 本部随一の良識派はある決意を胸に秘め、そっとノートを閉じた…。















 二週間後。




 竜崎は不機嫌だった。




…ノートがまわってこないのですが」
 不機嫌な竜崎に、月も思い出したように言った。

「そういえば、ぼくのところにもまだだけど…」

「ミサのとこにも届いてないよ、ライトのラブラブメッセージV

…それは永遠に届かないと思いますが、、相沢さんに渡したのがかれこれ二週間ほど前なのですけれど…」
「えッ…と…」

 相沢は言った。



 決死の覚悟で、

     「
松田に渡しましたけど
                             …と。



「やだなー相沢さん、ぼくもらってないですよ」
嘘付けおまえ、渡しただろ?ほら十日くらい前に
「えー?そんな、もらったらちゃんと覚えてま「いやいやいや絶対渡した!!!ほらあの、誰かに夜道で後ろから襲撃されたって言ってたからちょっと記憶がぼけてるんじゃないか?」

「ああ、あの時…あれは確かに死ぬかと思いましたからね〜いや、でも…」

 首をかしげる松田に、月は言いにくそうに声をかけた。

「松田さん…、もしかして…無くしたのなら素直にそう言ったほうがいいですよ」
「えっ、そんな…!」
「そ、そうだぞ、ここは素直に認めたほうが…!」

「マッツー管理悪いもんね〜前もミサのスケジュール表無くしたでしょ!」
 「ミサミサまで…!?」

…松田さん…
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!ぼく本当に覚えが無くて…」
言い訳は無用です…

 竜崎はゆらり…と立ち上がった。

「りゅ、りゅうざき…、あのっ!!」

 怯える松田に、竜崎は一冊のノートを差し出した。

「…え??」

一冊は一冊です
 松田さん、この真新しいノートの全ページに反省文を書いて、明朝までに提出してください。
 あ、それから念のために言っておきますが一ページに一文字とかそういう子供っぽい真似をしやがりましたら
 今度こそ物理的制裁が待ってますよ☆」

「明朝って、あの、今もう夜の十一時なんですけど…」

「きゃ、ミサもう寝なきゃ!お肌が荒れちゃう!」
「ぼくも少し疲れたな…そろそろ上がりましょうか、相沢さん」
「あ…ああ」

「お疲れ様でした。そういうわけですのでがんばってくださいね松田さん


「え…あのあのおっ!!!






 ひとり取り残され呆然とする松田に、すまん…これも捜査本部の平和のためだ!!
 と 心の中で手を合わせる真犯人相沢であった。








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 今時の小学生って交換日記やるんだろうか…











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