耽溺する、病にも似て。
「君のそれは、口唇性コンプレックスだね。」
夜神月はその細く長い指で無意識に唇を弄りながら言った。
「何かをしゃぶりたがる癖だよ。
小さい頃に母親のおっぱいを十分にもらえなかった子供…
…言い換えれば愛情不足のまま育った子供は、なかなかゆびしゃぶりを卒業できない。
大人になってからも潜在的に口にくわえたり、しゃぶったりするモノ、
…普通なら煙草とか飴とか…に執着するんだ。(君の場合は普通じゃないみたいだけど?)
特に ストレスを感じたりした時に顕著らしいよ?」
「私の場合はストレスではありませんよ。」
長々とくだらないことをお喋りするあなたにあえて口を差し挟まなかったのは、その仕草に見惚れてしまっていたから。
「気づいてないから潜在的、て言うんじゃないの?」
「……気づいていないわけではないのです」
言うなれば私は現在進行形の「愛情不足」な わけで。
その最原因たるあなたは、小さく整った顔を困ったように優しく歪め 囁くのだ。
「 きみのいっている こと がわからない。 」
き みのい ってい ること が わ からな い
きみ のい っ てい るこ とがわか らない
きみの いっている ことが わからない
理解不能理解不能理解不能 ぼくはきみをわからないぼくはきみをわかりたくないぼくはきみを拒絶するきみのこころを拒絶する
そうしてあなたはゆるやかに私のこころを抉るので。
「ほら、また 指。」
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わー 消化不良。
口唇性コンプレックスの話は六割方でっちあげです。
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