召しませニッポン Forever 〜寿司バー de フィーバー!〜
*召しませニッポンreturn`s〜魅惑のミソ・スープ〜を先に読んでからご覧下さい。
「どうでしたか、L。夜神さまに思いのたけを訴えることが出来たのでしょうか。」
「それが…」
Lはため息を付いた。
「アドバイス通りに言ってみたのだが、絶交を言い渡されてしまった…」
「それはそれは…」
ワタリは悲しげに眉をひそめた。
「きっとわたしの言語センスが良くなかったのでしょう。申し訳ございませんでした、L.。」
「いや、ワタリの教えてくれた言葉では、怒ってはいたがまだ『不機嫌』程度で済んでいたのだ。
なぜか判らなかったが不愉快な気持ちにさせたようだったので私も懸命に謝った。」
「左様でございますか」
では、なぜ・・・と首を傾げるワタリに、Lは続けた。
「せめて絶交でなく援交にしてくださいとすがってみたのだが、その後から口も利いてくれなくなった。」
それです。
秒速0.3の速さでツッコミそうになったワタリであったが、そこは超絶級執事(スーパー・エクストラ・バトゥラー)ワタリである。
内心の思いを押し隠し、もっともらしくあいづちを打つ。
「・・・・・・・・・夜神さまは大変に内気でいらっしゃいますから・・・・・・・・・・」
「・・・ワタリ、一体私はどうしたらよいのだろうか。」
ワタリは悩める主人に力強くうなずいた。
「お任せください!」
*
三日後。
月はリムジンの中に居た。
しかし、一言も口を利かず 極力Lから離れた位置に座っている。
「この前は本当ににすみませんでした。」
「・・・」
「お詫びのつもりで今日は食事に御招待します。」
「・・・」
・・・ハッ!(冷笑)
お前の言う詫びっていうのは嫌がらせを意味するのか?
大学から一歩出たら、
赤薔薇の絨毯+クラシック生演奏(協力:○ィーンフィルハーモニーの皆さん)+リムジンのコンボ。
あっけに取られている間に「さあさあ」と 連れ込まれてしまった。
・・・しかも付いてきてるし!生演奏!!
ヴィヴァルディの交響曲「四季」を奏でながらリムジンの前後を楽団を乗せた特設車が囲んでいる光景は、いっそ。
「悪夢だ…!」
月は堪えきれずにLにくってかかった。
「何考えてるんだお前はーーーーーーーーー!!!!」
「月くん、ようやく口を利いてくれましたねV」
「だいたいな!公道にあんなに薔薇を敷き詰めたら迷惑だろう!?片付ける人の身にもなれ!」
「意外とつまらないことを気にしますね」
「とにかくいいから、すぐに降ろせ!」
「そんなことをおっしゃらず、せっかく用意したんですから」
「いいって」
「何でも好きなものをご馳走しますから」
リューク「オホvやったな、月!」
食い意地の張った死神は喜んだが、月は眉をひそめる。
「…いいよべつに」
「いつもお弁当を作ってきていただいたお礼です」
「お礼なんて…」
お礼なんかのために作ってたわけじゃない。
・・・・あれ。
何でこいつに弁当なんて作ってやってたんだっけ。
何で…
考え込んでいる間に、高級レストランへと到着。
「こちらは今日だけ特別に借り切りました。何が食べたいですか?お寿司でも、てんぷらでも…
今日は月君の為に特別に豪華なものを御用意したのですよ。」
リューク「なあなあ月、何にする?豪華だって!世界一旨い林檎とかあるかなあ?」
…それは無いだろ。
リュークのお馬鹿な発言に、月は深く考えるのを止めた。どちらにしろ、何か頼まないと帰してもらえそうに無い。
「…じゃあお寿司。」
「判りました!!」
Lはぱちん、と指を鳴らした。
壁の一部が回転し、寿司バーが出てきた。
「へいらっしゃい!」
しかもカウンターの向こうにはねじりハチマキのワタリが!!
「え…ええーーー!!!???」
「ワタリはこう見えても寿司バーで働いていたことがあるのですよ」
「亀の甲より年の功ですな」
ホントあんた一体何者ですか!?と思いつつも、カウンターに座る。
それにしても…と月は考えた。
てんぷらと言ったら反対側の壁が回転しててんぷらやが出てきたのだろうか…?
「ちなみにてんぷらの場合は天井から吊り舞台が降りてくる予定でした。」
「エスパーかお前は!ぼくの思考を読んだのか??」
「何せ特別に豪華なものをと考えましたからね…」
「…果てしなく無駄な豪華さだなオイ…」
「安心してください、味の保証はいたしますから。」
…お前の味覚をあてにしろと?
と思いつつ 月はメニューを手に取った。
「……………・・」
ふウ。
予想していたとはいえ…と、月は額に手を当てた。
寿司ネタにチョコレート(板)って何だ!?
他にもマシュマロ、飴、マロングラッセと ありえないネタばかりだ…
リューク「林檎は無いのか・・・?」
あからさまにがっかりした様子の死神に お前はもう何も言うなするなむしろ存在を許してやるだけ有難いと思え という一瞥をくれてやると、
月はメニューを閉じて微 笑 ん だ 。
「りゅうざき」
「はいっなんでしょう!」
リューク「この笑顔が一番怖いんだ…;」
「… 嫌 が ら せ?」
笑顔の裏の怒気を知ってか知らずか、Lは首をよこに振った。
「滅相も無い。それは私用です。」
「月さまにはごく普通のメニューをご用意してございます。」
そういってワタリが手渡した品書きは墨痕鮮やかに流麗な草書体。
「…で、なんでカリフォルニア巻きが筆頭に並んでるんだ!!」
「そこはそれ、寿司バーですから。」
Lは慣れた様子で注文した。
「生クリーム軍艦一枚!」 *軍艦…握ったシャリに海苔を巻いて、上にネタを乗せたもの。
「かしこまりました。」
間 違 っ て る 。間違ってるよ この主従!!!
生クリーム軍艦…おえええ・・・
月は胸を押さえた。
「…何か…食欲なくなってきた…」
「だいじょうぶですか月くん?」
「ていうかさ竜崎」
「何でしょう」
「手掴みはやめろ!」
「スシはもともと手で食べていたのでは?」
「・・・・・じゃあ百歩譲ってそれは許す、だが・・・ネタとシャリを別々に食べるのは止せ!」
「おかずとごはんは別々にたべるものでは?」
「・・・・・お前根本的に寿司ってものを判ってないだろう」
「失敬な、自慢じゃないですが スシについては一家言有する自身はありますよ!」
「嘘つけ。」
「嘘じゃありません。その起源からちゃんと勉強しました。」
「寿司は勉強するもんじゃない!食べるものだ!!」
月は頭を抱え…、そしてふと気付いた。
「…じゃあ何か、もしかしてお前、今まで寿司も食べたこと無かったのか」
「いえですから食べてます、こうして」
アーモンドスライスの砂糖がけ(ネタ)を醤油代わりのチョコレートソースに付けて丸呑みする竜崎。
「その物体はもはや寿司を超越…というか侮辱している。」
月は嘆息した。
「しょうがないな…食べてみろ」
月は極上のトロを醤油皿と共に差し出した。
「…え…」
「何だその嫌そうな顔は!」
絶 対 食 え 、というオーラを放つと、竜崎はあっさりと降伏した。
「解りました。じゃあ月くんが食べさせてください。」
「…何でぼくが!」
「私は手がどろどろですから」
ほら、とチョコレートやクリームまみれの手を月の前に差し出す。
「う…」
「月くんが食べさせてくださるならいただきます。」
「…・ほら。」
しぶしぶLの口に寿司を運ぶと、Lはぱくりとそれに食いついた。
「旨いか?」
「………・・…」
「何とか言え」
「………………………・・失礼。」
Lは唐突に横を向いてお茶を飲み干した。
「…もしかして・・・今、涙目になってないか?」
「そんなことはありません」
「サビ抜きがよかった?」
「子ども扱いしないで下さい」
そしてまた あが、と口を開ける。
「…なんだ」
「お代わりです」
「旨いんじゃないか。」
「………・…月くんが作ったものは、もっと美味しかったです。」
「………………」
月は無言のまま、…次はサビを除けた寿司を運んでやった。
リューク「…何か…親鳥と雛みたいだな…」
「…言っとくけど、ぼくは別にお前のために弁当を作ってたわけじゃないんだからな」
「はい」
「…あくまで、ただの気まぐれだったんだからな」
「はい」
「…ふん…」
***
Lは玉子の寿司を気に入ったようだった。
「またか…せっかく高級なネタが揃ってるんだから、ほら、こっちのエビも食べろ。」
「たまごがいいです・・・」
そう言いながらも、Lは逆らわずに口を開ける。
「ハに(何)か…」
もぐもぐとLは言った。
「何だ?」
「こうしてると、恋人同士VみたいですねVVV」
「………・・」
「あ…あぐぁ!?ま、待ってください月くん、そこは口じゃないです、あ…あああああっ!!」
目…!目にサビが…!!!とのたうちまわるLを尻目に、月は箸を置く。
「ごちそうさまでしたワタリさん。」
すがすがしい笑みを浮かべて立ち上がる月に、ワタリは呼びかけた。
「夜神さま。」
「ん?」
「竜崎に、美味しいお弁当を有難うございました」
「・・・・・・・・・・・・・」
月は、後ろ向きのまま 肩をすくめた。
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今回で終わらせようと思ったのですが続いてしまいそうな予感…;まぁまたひょこっとネタが浮かんだら書きます。
ワタリ大活躍!ちなみに壁が回転して寿司バーが出てくるというレストランは某所に実在するそうな。。
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