スーパーマンにだって出来ないことはある。
「夜神くん、スーパーマンってご存知ですか。」
講義が終わり 皆が待ちかねたように廊下になだれる頃。
いつものように流河が話しかけてくる。
いつものようにぼさぼさの黒い髪と、情緒に乏しい表情で。
『飽きないな、こいつも。』
死神がくく、と笑う。口出しするな、と目で制しておいてから、僕はとびきり柔和な笑みで返す。
「スーパーマンって、映画の?知ってるよ」
いいとも、受けて立つよ流河。さあ、会話ゲームの、始まり始まり。
流河はぺたぺたと歩きながら、僕の隣に並んだ。
「では、スーパーマンの敵は なぜいつも 麻薬常習者だとか強盗だとかのごく簡単な犯罪者なのか
考えたことはありますか」
僕はうーん、と考え込んで、そしてことさら邪険にならないように気をつけて言った。
「無いな、ごめんね、流河。それが何か?」
「スーパーマンはけして国家的犯罪には関わろうとしない…
社会の悪と戦いながらも、その根源となる社会構造には介入しようとしない…おかしいと思いませんか?」
ああ、そういうこと。
「別に」
僕は言った。
「戦い方は人それぞれだろ。デモに参加するスーパーマンなんて見たくないしね。」
はは、と僕は笑った。
「問題はつまり構造なんですよ」
流河は僕の冗談を意に介さず言った。
・・・ノーリアクションかよ。こいつ、つくづく社会性無いな。
「社会をメタ次元で捉えてみればわかることです。この世界の戦争や紛争、犯罪、飢餓…
ありとあらゆる問題はすべて社会構造に帰結できます。」
何を言いたいのか図りかねる、と言うように僕は流河を見た。情感に乏しい瞳が僕を映す。
「犯罪者は無くならない。なぜなら、現代社会には犯罪を生み出すメカニズムが確立されているも同然だからです。」
−だから キラのやってることは無意味だ−
いまさらのように そんな挑戦的なメッセージを伝えても、僕は動じないよ?
「それで?」
流河は無言で僕を見つめた。だからやめろよ、その無反応は。
「生産されゆく犯罪者を刈り取っても、その根を取り去らなければ無意味です。」
「じゃあキラは、まず政界デビューを狙うところから始めなきゃいけないね。
いや、日本なんてちっぽけな国を変えても然したる意味はないのか。
現在キラは、アメリカの大統領になる方法を模索中だったりしてね。」
僕は極上の笑みを浮かべた。それでこの話はお仕舞い、そんな意味を込めて。
「ありがと、流河。面白い話だったよ。でも構造主義は少しばかり古くない?
今度はポストモダンに代わる新説をご披露願いたいな。」
流河はぽりぽりと頭を掻いた。
『なあライト、すーぱーまんって何だ?』
リュークが呑気に問いかける。
「今度見せてやるよ。」
僕は気乗りのしない声で答えた。
構造の問題だって?
でもお前だって構造を変えようとせずに たった一人の犯罪者を追ってるじゃないか。
僕とお前は所詮同類項、表裏一体、同じモノ。
同じモノ??
自分の考えに寒気を覚えて、僕はひとつ 身震いをした。
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スーパーマンの話はとある有名な言語学者の著作より形ばかり引用しました。
毎度毎度、リュークの扱いがアレですいません・・・
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