正過ごし方。











「異文化間交流において周囲の人間が協力することは正しい文化認識を育むために不可欠だと思います。」

「…突然何言い出したの?」

「今日は せつぶん という日だそうじゃないですか。」
 Lの発言に、皆は顔を見合わせた。


「そういえば…」
「懐かしいなぁ、子供の頃はやりましたけど最近はさっぱり…」
「あの豆、たいして旨くもないのに何かいっぱい食っちまうんだよなぁ」


 しばし盛り上がる皆をよそに、Lは嘆息した。

「やれやれ…皆さん、国籍不明の外国人に指摘されるなど、日本人の心を忘れてますね。実に嘆かわしい。」

「…認めるんだな、自分が怪しい人間だと;」
 月のツッコミはものともせず、Lは高らかに宣言した。

「とにかく一ヶ月前から楽しみにしていたのです…今日はどうあっても せつぶん を決行します!



一ヶ月前!?」
「そんなに気合入れる行事なのか、節分って…」
「正月に(このサイトでは)ほとんど正月らしいことができなかったからな…」




 1・豆をまく。




「じゃあ、、まず鬼を決めましょう。はい、松田さん。
ちょっと待ってください!問答無用でぼくですか!?不公平じゃないですか!」
「(ちっ)…じゃあ公平に、多数決で決めましょう。鬼は松田さんでいいと思う人―!」

    「「「はーい」」」(月、夜神父、相沢)


全員一致!?局長、月くんまで…!」
「お前は若いし、やる気(だけ)はある。適役だろう。」
「ぼく、鬼は松田さんしか居ないと思います!!(爽やかな笑顔)」

 たたみかけるような夜神父子の攻勢に、松田は陥落した。
そ…そうかな?

「はい、これが鬼の衣装です。」


***


 松田は鬼の衣装に着替えながらこう思った。

「ふふ…考えてみたら、節分がやりたいなんて竜崎も可愛いこと言うなあ…
 ちょっとくらいは豆に当たってあげたほうがいいだろうな。」


「用意できましたー」

 鬼の面を被った松田が顔を出すと、Lも手を振った。

「こちらも準備完了しました。」
 その隣には、 がしゃん!と、なにやら禍々しいメカが鎮座している。


松田(可愛くねえーーー!ナニあのメカメカしいの!!!?


あああの、りりり竜崎、そそそそれは…
「これは私の開発した豆まきロボット、『豆まき君二号』です。」

 …ということは、一号もあったということだろうか。
 松田の頭の中に疑問が浮かんだが、それは瞬時に忘れさられることとなった。

マシンガンの原理を応用し、マガジン部分に豆を装填してこのボタンを押すと…」


 ドガガガガガガ!

「うわああああああああ!」
 松田の悲鳴がこだました。


「おにはーそとー♪」



「…楽しそうだね…竜崎…」
「ああ…」




 2・豆を食べる。




「さて、次は一年の健康を願って豆を食べましょう。」


        (((松田はどうなったんだろう…)))


 誰もが思ったが、誰もあえて尋ねようとはしなかった…
 まあ、死んではいないだろう。多分。


「じゃあ食べようか…」
「随分色んな豆が並んでるな…ピスタチオまであるぞ…」
「それは、固い殻付きなので殺傷能力を考慮して用意しました」


         (((!!!)))


 やっぱり松田は死んでるかもしれない…。


 と、月が竜崎の手を掴んだ。

「こら、竜崎!豆は年の数だけ食べるんだ!」
「勿論です」
「嘘つくな!さっきから何個食べてるんだ、何百歳だお前!!

「!!」
 がば、と手のひらを開けさせると…、べたり と嫌な感触がした。

アーモンドチョコを豆に含めるなーーー!」
いわゆる広義の意味での豆類です
限りなく邪道だから!」

 

「あー…女房や子供が待ってるだろうな…お父さん、鬼になるって約束したからなぁ…」
「すまんな、相沢…」
 …言い争う二人の横では、遠い目をした相沢と局長が豆を貪っていた。




 3・お寿司を食べる。(地方ルール)




「さ、これで満足したろ?」
 やれやれやっと解散か、と立ち上がる一同に、Lは言った。

「いいえ、まだです。」

「…まだ何かありますか?」
 いぶかしむ相沢に、Lは答えた。
「私の入手した情報によれば、節分の夜には皆で寿司を食べるそうです。

「…そうだっけ、父さん?」
「関西のほうでそのような風習があると聞いたことはあるが…家ではやっていなかったな。」

「せつぶんの夜に、 えほう に向かって巻き寿司を無言で完食すると、一年間幸せになれるそうです。」
「えほう?」
恵方のことだろう。その年のおめでたい方角のことだ…」


 しかし現代日本人も忘れかけている知識である…。


「今年は庚の方角、西南西が えほう です!」


    「じゃあお疲れ様でした、相沢さん」
    「また明日な、月くん」
    「ああ月、コート取ってくれないか」


 …張り切るLとは対照的に、帰り支度に余念の無い一同。 


「酷いです皆さん…私の幸せなんてどうでもいいのですね…っ!」


「とりあえず節分の夜にこんだけ足止め食ってるってことが既にぼくらの家庭の幸せぶち壊しだから。」

 冷ややかな月に背を向け、Lは肩を震わせた。

「…どうせ皆さんは…節分なんて地味な行事どうでもいいんです…っ」
「…竜崎」

 …そんなに楽しみにしてたのか…、と 月はほんの少しだけ心が痛んだ。

「…どうせ…どうせ、
 皆さん二月の行事と言えばお菓子業界が仕組んだVの付くアレしか思い浮かばないんです…!

「り…竜崎?」


そう、2月最大の行事、ニッポンの恋する乙女達のためのアニバーサリー!
 甘い甘いチョコレートを想い人に贈る!
 
それはヴァレンタイン!!!


 Lはなおも熱弁を奮った。


「ふ…そうですその通り!
 誰だってくそ寒い夜に豆をまくなんていう奇妙キテレツな風習よりも
 
恋人たちの熱い夜を祝おうというに決まってます!



  相沢「ま…まさかこの人、バレンタインのアピールのための前哨戦に節分…・!!?」
  局長「うむ…!恐らく一ヶ月前から楽しみにしていたというのも節分ではなく…!」



「照れなくても良い!あなたもですね月く…むぐうっ!?」



 …月は満面の笑顔で巻き寿司をLの顔に叩き付けた。



…………………・巻き寿司を無言で完食したら幸せになれるんだったよな?
「ふぁい(はい)…」
「遠慮するなよ、さあ食え!ほら!
 と 月はLの喉にぐいぐいと巻き寿司を突っ込む。

 ぐ!

 L は 紫 色 に な っ て 倒 れ た 。



「…息の根が止まってます!」

 うろたえる相沢に月は素早くあたりを見回すと、
「これだ…!」
 と あるものに目をつけた。

「相沢さん、Lをしっかり支えていてください!」

 月は『豆まき君二号』のボタンを押した。 


 ドガガガガガ!


「う…げふぉお!」

 豆が背中を強打したことにより、つっかえていた寿司が喉を通り Lは息を吹き返す。

「大丈夫か!?」
「…幸せな夢を見ていました…」
「夢?」
はい…月くんがバレンタインのチョコレートを私にくださるという…がはぁ!」
「一生寝てろ!!!」


***


〜Lビルを後にする夜神父子の会話〜

「…まったく…大変な節分だったな…」
「うん、でも…」

 月は爽やかな笑顔を浮べた。
何だかすっきりしたよ。やっぱり、伝統行事は大切にするものだね!」
……………………………ああ。

 我が子ながら、時々本気で恐ろしい総一郎であった…。




                          *松田、明日の朝まで発見されず。










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 3の風習はruyの地方にはありません。一説によると海苔業界の陰謀だそうです(笑)
 恵方 はその年の干支によって変わります。
 歳神のいる方角でして、お参りもその方角の神社にすると良いそうです。




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