〜Poem Note編〜







 捜査本部に出入りするようになって数日。
 僕は、机の上の書類に 一冊のノートが埋もれているのを発見した。


「…何、これ。」


 何の変哲も無い黒いノート。僕はいやな予感がした。
 いやまさか…あれがこんなところにあるわけは無い…
 そう思って表紙を見ると、そこには白い文字で 「Poem Note」 と書かれていた。


「詩集…?一体誰の…」


「ら、月くん!」

 …Lだ。

 僕はとっさに開きかけたノートを閉じ、笑顔を作った。

「やあ。」
「そ、そのノート…見てしまいましたか!?」
 明らかにうろたえている…僕は笑顔のまま言った。

「いや。このノートは竜崎の?」
「はい、そうですが…」
 落ちつかなげに振舞うLを見て、僕は確信を深めた。


 このノートにキラ捜査の重要機密が書かれているのではないか…??


「竜崎は、詩を書くのか?」
 僕はゆっくりとノートを置いた。焦るな。ゆっくりと、Lからこのノートに関する情報を引き出すんだ。
「はあ…その、あまり得意ではありませんが…」
「興味深いな。どんな詩が好きなの?」
「最近は日本の短歌、俳句に興味がありまして…」
「へえ!凄いな!」

 大げさに驚いてみせると、竜崎はいっそうもじもじとノートを見つめた。
 もしかしたら、詩や短歌の中に 捜査上の細かい秘密が隠されているのかもしれない。

「ちょっと見せてくれないか?」
「だ、ダメです!」
「何で」
「恥ずかしいですから…!」
「いいじゃないか、見てみたいな。」
「でも…」
「僕はこう見えても古文も現代文も得意中の得意なんだ。何かアドバイスできるかもしれないし」
「…」

 しばらくためらっていたLは、しぶしぶ
「判りました」
 と ため息をついた。。

 ぺら。一枚目を見る。
 さあ、ここにどんな秘密が…??


痩せたエル 負けるなライト 此処に在り


「…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええっと…・・・・・これは…???」
 ひきつっている僕に、Lは嬉々として説明を始める。

「あ、これは捜査に身も心も痩せ細った私に、心からのエールを送る月くんの心情を代筆しました。」
勝手に代筆するなよ!!何だよ 此処に在り って!どういう状況なんだよ!!」
「いついかなる状況下でもキラ逮捕に向ける私たちの情熱は変わらないはずでは?」
「う;」

 それはそうだけど…けど…

「仕事に憔悴したわたしをそっと見守る月くん…けなげではありませんか」
「…やだよそんなストーカーみたいな…」
 僕は心底うんざりしながら何気なくページを捲った。
 するとそこには、いつの間に撮影したのか 大学で講義を受けているぼくの写真が添えられていた。

「ス ト ー カ ー は お 前 だ!!!」
 ぼくはそのページを破り取った。

「ああっ何するんですか人のポエムを…!」
「一部ポエムじゃないものがあっただろうが!」
「すべからく詩作とは創作意欲を刺激させる対象物を必要とします」
「そこに何で僕が出てくるんだ!!」
「月くんはこの上なく創作意欲を刺激してくれますから」
「僕はお前と話していると生きる意欲が失われていくよ…」
「そうですか??」
そうだ。それに、言いにくいが竜崎、これって…いわゆる剽窃(パクリ)じゃないか?小林一茶の…」
「失敬な、換骨奪胎と言ってください。」


「だって…『ライトくん ああライトくん ライトくん』…これなんてもう殆ど意味が判らない!!
「それはですね、あまりにも素晴らしい月くんを言い表す言葉が見つからず思わず出た、
 この上なく簡潔な魂の叫びを表しています。」
「…」


 Lの解説に頭痛がしてくる。
 もういい。僕は機械的に最後までぱらぱらと目を通し…最後のページに、思わず手が止まった。

働けど 働けど キラ未だ判らず じっとライトを見る


 やっぱり僕を疑っている…!?・・・・・・・ ・ ・


「っていうか僕の写真を勝手に貼るなっての!!」
えーーーー
「えーーーーじゃない!指もくわえない!子供かお前は!!!!」



 ああ…こんなもの、見つけなきゃ良かった…!!!

 僕は猛烈に後悔していた。











「どうなさいました、L。お菓子が進まないようですが」
「…こつこつ書き溜めていた詩作のノートを月くんに没収されてしまった…」
「おや、そうでしたか…何 冊 目 ですか?」
「うむ…確か56冊目だった…」
「さようでございますか。それでしたら大丈夫、
 スキャンしたバックアップデータが私のパソコンに入っております。
そうか!さすがだワタリ!どうせもう少したまったら、製本して月くんに差し上げようと思っていたのだが
 やはり自分の手元にも残しておきたかったからな…」
「喜んで頂けてようございました。」
「…それはそうと、私の秘密ノートを勝手に覗いたな、ワタリ…!
「お許しください。このワタリ、いつでもLのお役に立つべく努力を欠かさないのでございます」
「…仕方ない。今度のことは不問に処す。その代わり、新しい詩に添える月くんの写真を入手してくるように。」
「かしこまりました。」
 
 







 

 

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 いくらなんでもこんなあからさまに盗作なポエムはどうなの。
 そして56冊も書き綴ってるくらいならさっさと告ったらどうなの。
 ワタリはアレです、娘の日記を盗み見てしまう母親のような…そんな気持ち。多分ね!



  

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