お前を可哀想だと思ったことは永遠に内緒。
夏は苦手だ。
じりじりと思考を灼いてゆく容赦無い陽差しも、じわじわと身体に浸透してゆく生ぬるい湿度も。
細胞の腐敗を促す季節。どうしようもない倦怠に体を委ねる。
僕も少しずつ腐ってゆく、甘い腐臭を発して。
‐溶けてゆく体‐
柔らかく膨らむ僕の 数多の蟲を呼び寄せる芳しき僕の 水気を含みどろどろとした僕の
からだ。
…そんな空想に心を寄せても 現実は変わらない。暑い。あついあついあついあつい…
ふと。思う。
死神は暑さを感じないのだろうか。
…感じないのだろうな。
このくそ暑い中、平然と黒ずくめの衣装をまとうリュークを見るだけで 体感温度が上昇するような気がする。
お願いだから少しの間だけでも 僕の視界から消えてくれないものだろうか
と
うんざりした視線を向けると、クク、と嘲笑うような笑みを洩らした。
腹が立つ。
こいつはそうしていつも うだるような暑さも凍りつきそうな寒さも真に感じる事はなく生きてきたのだろう。
この熱をもてあます感覚も何も真実感じる事はなく。
暑さも寒さも心地よさも怒りも喜びも悲しみも諦めも歯がゆさも後ろめたさも何も。何も。
……・・ ・ ・ ・
「 」
『ん 何か言ったか、月。』
「いや。」
僕はそっけなく言った。
「林檎、やるって言ったんだ。」
そうして僕は
この暑い中
わざわざ遠回りをして
果物屋に寄った。
『いきなりどうした??』
そういいながら嬉しそうに林檎を手にするリュークに、僕は
「さあね」
と 笑った。
せめて束の間でも ほんの少しでも 彼が何らかを味わえる な ら 。
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気取られまいと思う。死神に哀れみは相応しくないから。
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