召しませニッポン特別編 〜DA☆菓子とスウィートなぼくら☆〜
*このお話は白月仕様となっております
午後二時四十分。
そろそろか…と、相沢は後輩に話しかけた。
「おい松田、準備はいいだろうな?」
「準備…ですか?」
先輩である相沢の言葉に、松田は首をかしげた。
「馬鹿、今日はお前の当番だったろう!」
「あ!そういえば!」
松田は手を打った。
準備とは、他でもない、Lの好物である甘味の準備である。新捜査本部も落ち着き、何よりワタリが捜査本部外の仕事を一手に引き受けるようになったので、おやつの用意は必然的に捜査本部の人々の役目となったのだが…
「い、今すぐ行ってきます!」
あわてて飛び出す松田を見て、相沢は溜息をついた。
「あいつ…今度は失敗しないといいけどな…」
同感、とばかりに摸木や局長もうなずく。
前回は
「お茶請けには漬物!これが和の心ですよ〜!」
と野沢菜を山盛り用意し、Lに摂食拒否されてしまっていた松田である。皆が心配するのも仕方の無いことだろう…
しかしそんな一同の心配をよそに、松田はものの十分ほどで帰ってきた。
「ただいま〜」
「お前…やけに早かったな…」
「任せてくださいよ!前回は凝りすぎて失敗したから、今回はシンプルに選びました!」
「へ…へえ…」
自信満々の松田の手にはコンビニの袋。
一同(((…不安だ!!)))
がちゃり☆
そこに、手錠で繋がれているLと月がやってきた。
「そろそろお茶の時間だと思いまして…」
「お前は少しは自分でお茶を入れてみようとか、そういった努力をしないのか!
他人の世話になるばかりじゃあ大人とは言えないぞ!」
いつも通り、ひょうひょうとしているLにまじめな月が小言を言いながら、お茶を淹れようとテーブルを片付け始める。
「あっ いいですいいですぼくがやりますから!手錠が付いてたらやりにくいですし!」
「そうですか…じゃあお願いします、松田さん」
「たまには気が利くじゃないですか松田さん」
「やだなあ竜崎そんなに誉めないでくださいよ!」
ほどなくして香りの高い紅茶を運んできた松田は、
「お茶菓子です☆さあ召し上がれ!」
と 竜崎の前にコトリと皿を置いた。
「・・・・・なんですかコレは」
「ねるねるねるねです!」
ねるねるねるね とは!
その独特の手作り感覚といい、得体の知れない作成プロセスといい、限りないチープさを伺わせる風味といい、
小学生の間で一世を風靡した究極の駄菓子!
「不思議なことに、練れば練るほど、色が変わるんですよ!さあどうぞ!」
がしゃーん!がたたーん!がちゃんっ!
「ああっ竜崎がちゃぶ台返しをー!!」
「ほわちゃああああ!!!お茶があああああ!!」
「うわあ!相沢さんが燃えよドラゴンみたいな声出してるゥ!」
「落ち着け竜崎!」
「私を馬鹿にしてるんですかそうですねそうでしょう?」
「そ そんな…!そんな言い方…!!」
松田は俯いたまま 声を震わせた。
「…って…」
「何ですか一体…」
「練って…練ってみればいいじゃないですか!!!」
松田は叫んだ。思春期の青年のように。
「…練ってみもせずに…どうして…どうしてそういうことが言えるんですかっっ!?
汚れっちまった悲しみを…練って癒そうとは思わないんですか…!」
イヤ、思わない、というかわけが判らない、と皆思ったが、松田の瞳に浮かぶ単純かつ純粋な涙に、一同は心を動かされた。
「松田、お前そこまでねるねるねるねのことを…!」
「松田…」
「松田さん…」
「松田の馬鹿…」
一同(((ダメだ!全然何も感じてないこの人!)))
「ま…まあ、それにしても、袋も開けないうちから毛嫌いするのもちょっと酷いかな」
こういう時に意見を収拾してくれるのは(白)月ならではの配慮である。
「ですが月くん…」
「そうだね…」
月は微笑んで袋を取り上げた。
「うちは母さんが合成着色料の入ったものに厳しくて、こういう駄菓子はほとんど食べたことがなかったから…
正直、興味はあるよ。」
「幸子はできた母親だからな」
うむ、とうなずく総一郎に、月は開封し、中身を手際よく作りながら答える。
「でも同じ年頃の子は皆食べていたから、一度でいいから食べてみたいと思ってたよ?」
「そうですよね!小学生男子は誰もが一度は憧れる食べ物でしたよね!」
「松田…お前はもう黙ってろ…」
「…うん…こんなもんかな。」
スプーンをひとなめし、月は容器ごと竜崎に差し出した。
「はい、竜崎」
「…!月くん…!」
松田(甘い…!ゲロ甘ですねあの二人!)
相沢(俺はこの物体 *ねるねるねるね も相当甘いと思うが…)
その後、「間接キスですねVv」などと頬を染める竜崎と、「ははははははキモいぞ竜崎☆」と笑顔で交わす月らの、なんともほのぼのとした光景が見られたのであった…
*
次の日。
「一体何処へ行くんだ、竜崎?」
「付いてくれば判りますよ♪」
手錠に引っ張られるままに竜崎の後を付いていった月が案内されたのは、地下の特設プールだった。
「こんなとこに、プールなんてあったんだ…」
「はい。運動不足にならないように、ジム施設を設けてあります」
「へー、でも何かこのプール…」
水、入ってないよね?と言いかけ、月は固まった。
…プールの中になみなみと注がれていたのはねるねるねるねの粉末だった。
「………っ」
言葉も無く立ち尽くす月を、竜崎は嬉々として振り返った。
「さあ存分に召し上がれ月くん!!!」
…め…っ!
「召し上がれるかーーー!!!」
「え…でも先日あんなに楽しそうに食してらしたのに…」
「大体何でソーダ味なんだ!ぼくはぶどう味の方が好きだ!!」
拒むのはそこか!とツッコミを入れるかと思いきや、
「そ そうだったんですか!それは盲点でした!!!」
無念…!と、Lはその場にくずおれた。
「…いたしかたないですね…処分いたしますか…」
「待て!食べ物を粗末にするなんて許さないぞ!」
さすがは(白)月、つくづく厄介なマトモっぷり。
「向こう一週間、お前のおやつはねるねるねるねだけだと思え!
「え え! …じゃあせめて毎回月くんが『あーんD』ってしてくださ…」
「ははははははははははははははははははははははははははははははははは!ウザイぞ竜崎☆」
*
「あっれー竜崎暗いですねー☆どうしました??」
「…誰のせいだと思ってるんです」
「えっ…ぼく何か悪いことしました??」
「まあ強いて言えば生まれてきたことや息してることや存在してることなど反省していただきたいですね」
「意味するところは一つ(=死ね)じゃないですか?!」
「とりあえず向こう一ヶ月松田さんの食事を三食ねるねるねるねにさせていただきますから。」
「ちょ、それプチ拷問だから!何がとりあえずなんですか一体!?」
「ご安心ください、味はスイカ、ソーダ、ぶどうの各種を取り揃えてますので。」
「そ…そんなっ!」
松田は必死に追いすがった。
「せ、せめてデザートに…うまい棒をつけて下さい…!」
「……………まだまだ余裕がありそうですので一ヶ月といわず向こう一年くらい…………練りますか?」
「ノーオオオオ!!!!」
…おしまい☆
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半年くらい前のイベントで日ごろお世話になってる管理人さま方に送らせていただいたコピー冊子(既に本とは呼べない)より。内容はほとんど直してません。
冊子とねるねるねるねとうまい棒をセットにして(一部セットで差し上げられない方も居りましたが;)差し上げました。
「読んでからお食べください」ってやつです。このネタ思いついたのがイベントの三日くらい前なんですけどどうしてもやりたくて徹夜…小ネタ大好きなんです。
また何かゲリラ活動を思いついたらやるかもしれません〜。今度は、日ごろサイトを見てくださってる方にもお返しできるようなやつがいいなァ。
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