のミッション☆インポッシブル
     或いは涙のキスもう一度アゲイン、むしろリフレイン。
      
*Lキラアンソロの採録作品です








 ある、晴れた昼下がり。


 大学もひけて、今日はこれから捜査本部になっているLのホテルに行くことになっているけれど
 こんなにも気持ちが良いと、なんとなく散歩でもしたい気分だ。


 と、リュークがふわふわと飛び回りながら 言った。


『おい月…後ろ…』
「…」

 僕は目線でうなずいた。


 キャンパスのどこからか、僕をつけている奴がいるのは知っていた。
 うっとおしいことは、うっとおしい…僕は歩調を更に速めた。







「…って…お前かよ!
「バレましたか☆」

 競歩選手もかくや、のスピードで歩き続けること一時間
 散歩したい、とは思ったのは確かだけど… これはもはや散歩ではない。

 何だかもういい加減ハラが立ってきたので、電柱に張付いてた影を引っぺがしてみたら
 L だ っ た 。

「何やってんだこんな所で!!?」
「それは…、月くんの全てを知……偶然お見かけしたので一緒に本部まで行こうと思いまして。」
「…今 何か…言いかけたよな?」
いいえ。
「…とにかく、さっさと声かけろ!真剣にヤバい人かと思ったぞ!?」
「この爽やかにも美しい午後、あなたにかけるに相応しい言葉は抒情的なハイネかリルケか或いは情熱的にランボーの詩か
 模索しているうちに 時間が過ぎてしまいました」

「…一つだけ言っておくけど…今後、そんな風に僕に声かけたらシカト決定な。」

 お前も誰だか判ってたんなら言えよ!と、殺意のこもった流し目をリュークにもくれてやる。

                        リューク 『ひっっ』

 …と、Lがぼそりと言った。

「…喉が渇きました…」








「と言っても…この辺りはファミレスしか無いな…」

「ファミレス…ファミリーレストランですか…」


 Lの頭の中:ファミリーレストラン → 家族専用レストラン(違) →家族前提

  結 婚 前 提 !!?

「そんな…大胆ですね 月くんv」
「何が;
何かまたろくでもないこと考えてないか!?
「いえいえ、いいですねファミリーレストラン。さあ行きましょうファミリーレストランへ!!」
連呼するなよ…じゃ、行こう」




 適当に、近くにあった不○家に入る。


「いらっしゃいませ、二名様ですね?おタバコは吸われますか?
「いや。」
 禁煙席へ案内され、席に着く。

「…あのさ竜崎」
「はい」
何で真横に座るの?
「こういう座り方が(恋人同士では)スタンダードだと聞いたのですが」
誰にだ。その知識間違ってるから。僕はこっちに座るよ」
「…そうですか…」

 残念そうに呟くL。僕は取り合わずメニューを渡した。

「何か食べる?ここは甘いものが充実してるし」
「…そうですね…」
 メニューを仔細に眺めるLに、僕は言った。
「じゃ、店員を呼ぶよ」
「それを押すと来るのですか」
「ん そうだよ。やってみたい?」
「はい」

 ピンポーン

「…」

 ピンポーンピンポーンピピピンポーンピピピピピンポーンピン…

連打するな。すぐ来るわけじゃないんだよ、向こうだって忙しいんだ」
「そうですか」

「…大変長らくお待たせいたしまして申し訳ございませんでした、ご注文をどうぞ」
 僕が口を開く前に、Lは言った。

「ご苦労でした、もう下がっていいですよ」

「……は???」
「押してみたかっただけですからまだ注文は決まってな すいません!こいつちょっと可哀想なやつなんです!ドリンクバー二つ!!」


「……かしこまりました」

 …店員は引きつりながら帰っていった。
 
決まってないなら押すな!迷惑だろ!!!
「ケーキを頼みたかったのですが」
黙れ。絶対迷惑な客だと思われてるぞ。さっさと喉を潤おしてここを出よう…」
 僕は立ち上がった。Lが不思議そうに尋ねる。
「どちらへ?」
「ドリンクバーだよ。最近は客がセルフサービスで飲み物を取ってくる形式が多いんだ」
「はあ…」

    〜隣席のバカップルの会話〜

        「トシ子、いいよ 待ってろよ。俺が行くから。何飲みたい?」
        「えっ 順くん、優しいvv」

                       
チュッv


「…」
「何指くわえてアホ顔してるんだ;」
「…月くん…私、行きます
は?どこへ?
「飲み物を取りにです」
「ああ…………・・」

 ドリンクスタンドのことか。それにしては、宇宙までも行きそうな決意をみなぎらせていたが。

「いいよ別に」
「そう言わずに」
「いや、だって…」
いいから、待っててください
 訳のわからぬ迫力に気おされ、僕はうなずいた。
「じ…じゃあ、コーヒーを頼む」

 …まあ、そう複雑な操作は無いはずだから…な…。









10分後。

「お待たせしました月くん」
ほんとにな。えらく時間がかかったけど、何やってたんだ?」
「普通にコーヒーとホットミルクをもらってきただけですが」
 Lの手にしたカップには確かに泡立ったミルクがなみなみと注がれている。
「へえ、ホットミルクなんてあったっけ」

 言いながら、僕は渡されたコーヒーをブラックのまま一口飲んだ。

ゴッフォ!!何だコレ!ニガい!!!
「コーヒーですから」
苦すぎなんだよ!やたら濃いじゃないか、エスプレッソか!?

 …言いながら、僕は嫌な予感がして尋ねた。

「もしかして…そのホットミルク…」
「はあ」
どうやって取ってきた、そのミルク!?

「それはですね…カプチーノのミルク部分だけ先にカップに取り、抽出されたコーヒー部分を別のカップに取るんです。これを三回ほど繰り返せば、
 牛乳とコーヒーの部分がそれぞれ分離し、純粋なホットミルクが出来上がるという寸法です


コーヒー部分が僕のかーーーーーー!!!!

はい

「ふざけんな!すっごい体に悪そうじゃないか!!」
「原理的には問題ないはずですが…合理的だし
気分的に大いに問題だ!もういい、もう一度行ってくる!」
「あ、じゃあ私にも何かお願いします♪」
早!もう飲んだのかよホットミルク!」
 思わず断りかけ、僕はあることを思いついた。

「…いいよ、持ってきてあげるよ竜崎」









「はい、お待たせ」
「有難うございます。」
「あ、もうそれ ミルクとか いろいろ入れてあるから。」
「はい。」
 Lはなおもスティックシュガーを一本ざらざらとカップに流し込むと、ミルクティを口元へ運んだ。
「…ガハァ!何ですかコレ!?」
「ミルクティだよ」
「心なしか…かなりしょっぱいんですが;」
「ああ、それはね…モ ン ゴ ル 仕 込 み のミルクティなんだ。砂糖代わりにを入れて飲むのが当地のやり方さ☆」
…できれば、というか切実に 普通のミルクティが宜しいのですが…
「いや何、お前いつも甘いものばかり摂取してるだろ?糖分過多になるといけないから中和させようと思って」                     

                             リューク『…満面の笑みだな、月』

砂糖+塩で中和ですか!?その公式明らかに成り立ちませんから!!」
「…残念だな…お前のために特別に考えて作ってきたのに
「…
僕の気遣いなんて所詮必要なかったんだな…ごめん、不味いミルクティを飲ませたりして…」
「い…いえ!そんなこと…!!」

 Lは塩味ミルクティを一気に飲み干した。
 さすがにそこまでするとは思っていなかったので僕はぎょっとして身を乗り出した。

「お…い、大丈夫か!?」 
あ…愛が塩辛いです…」

 Lはわななきながら テーブルに付いた僕の手をガシィ!と掴み、握り締めると ぐい、と顔を近づけた。

 ど…瞳孔開いてる!?!

 マジ怖ええ!!と思いつつ、目が…目が離せない!

「でも…感動しました…、月くんがそこまで私のことを想って下さってるなんて…!!」

「いやごめん、アレ嘘だからちょっ…ま…
近いから!真剣に近いから!!!


 しかもまだ近寄っ…


          うっちゅーーーー


                                リューク 『ウフォッ!?

 …店内の時、しばし 凍る。


 何コレ。何だコレ。しょっぱい、ああそうか、塩味だから…って…



「…っは」

 唇を解放され、僕は呆然とLの顔を見る。 Lは満足そうに唇を舐め、言った。

…月くん、甘いですv
「…う…」

「うわあああああああああああ……」

 …衆人環視の中 僕は 店外まで響き渡るような叫び声を上げた。

 上げた。

 上げ続けた…。









 次の日。
 足取りも重く、僕は捜査本部へと向かっていた。ここだけは、何があっても行かないわけにはいかない…
 ああ、昨日は酷い目に遭った…くそ…Lの奴…まさかあそこまでするとは思わなかった…

 …昨日の記憶が蘇る。
 
あ、あんな所であんな…!いや、場所なんて関係ない、どこだろうとあんなこと…


「…」
『何赤くなってるんだ、月?』
「赤くなってなんかない…!」
 とにかくだ!もう…不二○なんて行くもんか…

 僕は本部となっているLの部屋のドアをノックした。

「どうぞ、月くん」
 あいつだ…よりにもよって…いや、昨日のことはもう忘れよう;平常心平常心…

「入るよ」


 がちゃ


 …見覚えのある人形が僕を出迎える。二つに結った髪、ちょろりと出した舌…
 …これは…この愛嬌たっぷりの人形は…!

ペ○ちゃんーーーー!!?
「いらっしゃい月くん」
「おま…コレは何だ!!?
○コちゃんです
見れば判る;て言うか…」
 蘇る悪夢黙り込む僕に、Lは何を考えたか 言った。 

いくら月くんでもコレはあげませんよ
要 る か !!(魂の叫び)…そうじゃなくて、どうしたんだコレ!!?」
「拾いました」
「どこで!?」
「昨日の店の前に落ちてました」
それは落ちてたんじゃない!飾ってあったんだ!!
「え…でも真夜中に外に置き去りでしたが…」
それが普通なんだよ窃盗罪だぞ!!そもそも何で真夜中に不二家なんか行くんだ!!?
「それは…昨日の二人の(愛の)メモリアルになるものを探そうと…」
…聞かなきゃ良かったよ;何の記念だ!大体どうやって運んできた!?」
夜神さんをはじめ、捜査本部の皆さんに極秘裏に運ぶようお願いしました。」
勘弁しろよ…父さんも共犯かよ!!Lの指示とは言え疑問くらい持たないのか!!?」
「彼らを責めないで下さい…よくやってくれていますよ」
僕 は お 前 を 責 め て る ん だ!ともかく今すぐ返して来い!!」
「…えー…」
「えー じゃない!子供かお前は!!?」
「どうしてもですか?」
「どうしても!」
一生懸命世話しますから!!
ダメです!!元のところに返してらっしゃい!!



                   リューク 『ペットかよ!!』



「…仕方ありませんね…じゃあ、行ってきます」
「待て!何してる!?」
「何って返して来ようかと」
お前がそんなもの担いでたら見た目的に即アウトだろ!!?僕は身元引受人になるのはイヤだ!!何か他の方法考えろ!」
「あなたも大概ムチャクチャ言いますよね…」
「何がだ??僕は真実しか言ってない
「…解りました。私に良い考えがあります」
「何??」
「まずは…」

 Lは、松田さんを呼んだ。

「電気店で大き目のダンボールを拾い、組み立てて持ってきてください」

 二十分後。松田さんは、言われたとおり大き目のダンボールを持ってきた。
 つくづくこの人もいい人だ…、と 僕は同情する。
「これで良いですか?竜崎」
「十分です」

 Lはダンボールの中にペ○ちゃんを入れた。

「カモフラージュってわけか…」
「そういうことです。
 次に、松井さん、再度ご苦労様ですが これを裏のポリバケツに放置してきてください
「は…はあ。」
放置!?捨てて証拠隠滅か??」
「…いいえ」

 松田さんがそれを運び去った後、Lはおもむろに携帯電話を取り出すと 僕に渡した。

ここからがこのミッションの最重要部分です
「あ…ああ??」
 Lの迫力に気おされ、僕は携帯を受け取る。
「月くん、これから言うところに電話を掛けてください」
「…何で僕が…」
「ここから先は、あなたにしかできないのです。
 いや…むしろ、月くんに全てが懸かっているといっても良い!

「…」
 僕はしぶしぶ携帯を開け、奴の言う番号を押した。

  プルル…かちゃ。

「はい、○二家××店です」


 え!?


 僕はうろたえた。しかしLは片手を挙げ、慌てないよう合図すると 僕に一枚の紙片を渡す。

 そこにはこう書かれていた。



   なるべく高い声を装って読んでください。


  もちもち☆あたち○コちゃん!お散歩に出たら道に迷っちゃった!テヘ♪
   今○○ホテルの裏路地でカラスと格闘中☆ひとりで寂しいの…
   早く、お迎えに来てね☆☆☆  




 …僕は通話を切った。



「ああっ!!」
な ん だ こ れ は!!!
「何って…ペ○ちゃん自ら電話してきたら、不○家の方が回収に来るだろうと思って;」
「そうじゃない!そうだけどそうじゃない!!この文面が何だと訊いてるんだ!!

それはペ○ちゃんになりすました文面です
○コちゃんがカラスと格闘するか!!?いや、それ以前に何で僕が言う必要があるんだ;」
捜査本部の人間の中では月くんの声が最もペコ○ゃんに適していると判断しました
そんな判断だけ的確だなオイ!
「さあ月くん、恥ずかしがらずにレッツ・アゲイン!
するか!!!
「あなたならできます!その器です!!
全然嬉しくないよ!お前がかけろ!」
「嫌です。月くんに可愛らしい声でもちもち☆と言わせないと作戦は失敗です


「趣旨変わってるだろーーーーーー!!」

 僕は絶叫した。









「ああ、お帰りなさい松田さん。ご苦労様でした」
「ただいま〜あれ?竜崎は?」
今、隣で電話かけてます(ニコ☆)」


『…月、あれはちょっとやりすぎじゃないのか…』
「いいんだよリューク。当然の報いだ」


 月が書き換えた文面


〔 もちもち☆あたち○コちゃんだピョン♪お散歩に出たら道に迷って帰れなくなっちゃったの、
 シクシク;お腹が空いたから今○○ホテルの裏路地でゴミ漁り中☆いや〜ん、まいっちんぐ〜 早くお迎えに来てチョ☆  〕










「バーカ」


 小さく呟いて 気付く。

                  自分が、無意識のうちに 唇 をなぞっていたことに。


「……バカ」










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 福山さはる様の企画されたLキラアンソロ第一弾へ捧げたものです。一年以上昔のものなので、ネタが古いです。
 一応Webに載せる上で伏字を用いてみましたが、意味ないですね…。このアンソロ、ギャグ書いたのがruyだけで、タイトルからして激しく浮いていたのを懐かしく思い出します。
 15禁?だったので、ものすごい頑張ってみたんですが…頑張って…キス止まり。

 おかしい…それから一年以上経ってるのに一向に進歩が無い…




                                   




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