*この物語は竜崎→月風味です
*この物語は監禁後の白月設定です
*微妙に灰色ぽいですがあくまで記憶喪失中の月を想定しています
君とどこまでも☆スウィートエスケイプ
突然だが、事件は竜崎の衝撃の告白から始まった。
「月くん、私を連れて逃げてください」
「断る!」
「な 何て力強い返事…!」
「薄幸の美少女に言われたのならまだしも、何でお前なんか連れて逃げなきゃいけないんだ」
「…じゃあ仮にミサさんだったらOKなんですか…?」
「う…いや確かに薄幸で美少女だけど・ミサはなんか違う気がするな…」
「とにかく時間が無いので月くんには今すぐ私を連れて逃げてもらいます」
「どうしてそんなにもぼくを主体にしたがるんだ!!!誰かー助けてー拉致られるうう」
と
そのとき、竜崎が「うっ」と口元を押さえた。
「?なんだ、どうしたりゅ…」
ゴホ…、と咳き込んだ竜崎の、押さえた手から見えた赤いもの…
「血!?」
ど、どうしよう、とりあえずワタリさんを…
と うろたえる月の腕を、竜崎はものすごい力で引き寄せた。
「ダメです!」
竜崎の顔は青ざめ、苦痛に歪んでいる。
「…竜崎?』
「…ワタリには…決して知らせてはなりません」
「でも、…」
「月くん、…私は…私は、不治の病なのです…」
「え…!?」
月は驚きの余り目を瞠った。
不治の…!?
「そ、そんな…
じゃあ、その不健康そうな肌の色も、
淀んだ眼も、
死人みたいな唇の色も、
あとなんていうか全体的に生気が無いのもみんなその病気のせいだったんだな!?」
「………月くん…私のことをそのような目で………」
竜崎はちょっぴり涙が出そうになった。
「…、お前が不治の病だなんて…どうすればいいんだ…!」
「私のためにそんなにうろたえてくださるなんて…」
竜崎は涙を浮かべんばかりだった。
「死後の事はきちんと考えてあるんだろうな?
身元不明の外国人死体を処理するなんてめんどくさいこと、ぼくはイヤだ。
大体保険は入ってるだろうな、国外に墓があるなら送ってやらんでもないが、
遺体は貨物扱いだから手続きが面倒だし、大体エンバーミング(遺体保存)だって、いくらすると思ってるんだ」
「……うろたえながらも的確な判断…さすがです……」
違う意味で涙を浮かべんばかりの竜崎に、月は更に勘違いする。
「そんなに痛みが酷いのか!?とにかく病気なら今からでも病院に…!」
「いえ。末期ですので…もう、手の施しようがないと医者にも言われました」
末期…!?
やはり、ガンなのか…?
はっきりした病名告知を受けていないかもしれない竜崎に、ガンかどうか問いただすのは酷ではないだろうか?
医療にメンタルな面が及ぼす効果は計り知れないというし…と (白)月が思い迷っていると竜崎が派手に咳き込んだ。
うごほォ!
「大丈夫か!?」
「ら…月くん」
竜崎は息も絶え絶えに月の手を握り…言った。
「せめて最後の思い出に…行きたいところがあります…」
*
特大チョコパフェを前に、月は渋い顔だった。
竜崎の最後の願い…それは、女子高生やカップルなどがたむろするこじゃれたカフェにあった。
「…お前…最後の思い出がこんなことで本当にいいのか…?」
「ええ、ここのパフェはぜひとも食べてみたかったんです、どうぞ月くんもそちらから頂いてください」
「いただけるか!コレカップル用のパフェじゃないか!
ただでさえ手錠のせいで横並びに座らなきゃならないんだぞ!何だこのハート型チョコは!!」
「おやおや・いくら月くんでもそのチョコプレートは渡せませんよ…!」
「誰が欲しいと…!」
月は慌てて声を潜めた。手錠には見えないように上からコートをかけているが、
そのせいで二人が横に並ぶいわゆる恋人座りになっている上、カップル専用のラブパフェで店内の注目度抜群である。
「とにかく!さっさと食べて本部に戻るぞ!」
「照れなくてもいいんですよ」
「食え、早めに食っておとなしく死ね」(*注・白月)
「じゃあほら、月くんも食べないと」
く…っ!
何かうまく乗せられているような気もするが、
確かにこの場を一刻も早く去るためには、パフェを完食するしかない…!
月は猛然とスプーンをふるい始めた。
*
「有難うございましたー」
「美味しかったですねvv」
「…ゥぷ・」
月は口を押さえた。まさかあの後、メニューに載っているケーキ&ジェラートが全種類やってこようとは…
もう当分甘いものは見たくない、と顔を上げる月の目に、Lもまた、口元を押さえているのが見える。
「お前もかよ!!」
ダメージ負うくらいなら食うな、とツッコみかけ、
無表情な顔が苦痛に歪んでいるのに気づいて、月は心配そうに竜崎の顔を覗き込んだ。
「……なあ、やっぱり戻って病院に行ったほうがいいんじゃないか?」
「いえ…大丈夫です…」
俯きがちの竜崎は、月に腕を取られ、青ざめた顔を無理に微笑ませた。
「そうは言っても「…が、少し休んだ方がいいかもしれません」
竜崎はカフェの向かいにある 甘 味 屋 に突入した。
「いらっしゃいませー」
「あ、白玉汁粉とクリームあんみつにくずきりお願いします」
「待てえええええええ!!!」
月は全力でその場に踏みとどまり、手錠の鎖を引っ張った。
この際人目など気にして入られない。
竜崎がよろけたところを暖簾の外に引っ張り出すと、鎖で首を絞めながら詰問する。
「拷問か?これは新手の拷問なのか?ぼくはキラじゃないと認めたのはあれは嘘だったのか??」
ぎりぎりぎりぎり…
「ら…月くん、ちょ、ロープ!ロォォプ!!っていうかこの場合チェーンって言うんですか?」
「………余裕ありそうだな」
ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり…
「ぐ!」
と、その時、竜崎は上空にきらりと光るものを認めた。
「危ない月くん!!!」
「わ」
竜崎が、月を抱きすくめ横様に飛びのいた瞬間、
バリバリバリ!という音と共に辺り一帯に泡のようなものが広がり、逃げ遅れた人々を絡め取った。
「わああああ!なんだこれ!」
「いやああああ!!」
阿鼻叫喚の街中で、難を逃れた竜崎は月を横抱きしたまま呟く。
「発砲ウレタンを使用した非致死兵器ですか…ワタリもやりますね…」
「やりすぎだろ明らかに」
「さあ月くん、名残惜しい体勢ではありますが第二波が来る前に屋内へ逃げ込みますよ!」
「…そうだな、とりあえずぼくの腰から手を離せ」
その時、正面から総一郎が走ってくるのが見えた。
「月!そのまま竜崎を捕捉しろ!!」
「父さん!?」
っていうかむしろ捕捉されてるのはぼくなんだけど…
と 言う間もなく、竜崎はがくんと鎖を引っ張った。
「ちょ」
「行きますよ月くん」
「ま まて、」
「急がないと裏も封鎖されている可能性が」
「待って…!」
いつになく張り詰めた声、思いつめた顔に、竜崎は思わず固まった。
「…月くん?」
月は竜崎の顎にすい、と指をかけ…顔を近づけた。
「…ら・月くん?」
「黙って…目を瞑れ」
「は、はい…」
竜崎はおとなしく目を閉じたが、心の中では葛藤していた。
…おかしい、いつになく積極的な夜神…嬉しい…!
嬉しいがむしろここは私がイニシアチブを取るべきだったのでは…
…途中からあらぬ方へ飛んだ竜崎の葛藤に構わず、
月は竜崎の口に手をかけ、ぐわっとこじ開けた。
「あ、あいううんえうか(何するんですか)」
「やっぱり… 虫 歯 か!!!」
あー こりゃ酷いな竜崎、奥歯がぼろぼろで常時出血してる。確かに手遅れだな、抜くしかない。
そうすると、やたら咳き込んでたのは血に咽んでたわけだな。
血液には催吐性(吐き気を催させる性質のこと)があるからな」
冷静に分析しおえると、月は、上空でヘリコプターのホバリング待機していたワタリにあっさり竜崎を引き渡した。
「ご協力感謝します夜神さま」
「礼には及ばないよワタリ」
「歯医者はいやですっ」
「うるさい」
「往生際が悪いですよL」
「ら、月くんせめてお願いがあります!」
「…何だ」
「治療の最中月くんがナース姿で横に居てくださればきっとッ「この変態がァァァァ!!!!!」
ばきィ! と、見事な右ストレートが竜崎の頬にヒットした!
ぎゃああああああ・・ああ?
「あ…ういああうえあいあ(虫歯が抜けました)!」
「え…ほんと?」
「あいおうんあうあえすv(月くんさすがですV)」
と、血反吐を吐きながら浮かれる竜崎に、今度こそ笑顔で月は言った。
「よかったな!じゃあそのまま下臼歯の虫歯も治療してもらえよ」
「え…」
「虫歯は根治が大変だからなー、しっかり治して来いよ!あ、勿論おやつは当分禁止だな!」
「あ…あうあああああああ!!!」
:おまけ
「月くん…治しましたよ虫歯…もう何も怖くありません!」
「おま…治したって言うかソレ…総 入 れ 歯 じゃないか!」
「ふふ・最初からこうしておけば何も問題は無かったというわけです!
これでいくら甘いものを食べても虫歯くんバイバイ☆
あれ?どうしたんですか月くんその冷たい視線…は…??」
・・・うわあああああああああ!!
「おはようございますL、おやどうしました?」
「…ものすごく怖い夢を見た…」
…それから竜崎は毎日の歯磨きに留意するようになったそうな…
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月と二人でラブパフェを食べたかったらしいよ。
最初は二人が無人島に流れ着いて面白ライフを送るお話しだったんですけどね、
虫歯ネタでそこまで引っ張るのはどうかと思って切りました。大部分切りました。
歯医者のたびにワタリとサバイバル系な追いかけっこしてたらいい(迷惑だ)と思います。
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