花嫁の憂鬱(ミサ独白)




 あたしは別に、世界なんてどうでもいいの。
 まして他人なんて輪をかけてどうでもいいの。
 何も 考えるのはめんどくさいの。

 でも漠然と、今の世界は嫌い。
 このままの世界は嫌いなの。
 
 誰か あたしの代わりに世界を変える方法を考えてくれませんか?
 そしたらあたしはその人に全てを委ねるでしょう。


      〈 あ た し は 聖 女 、 あ た し は 娼 婦 、 ソフィア。〉



 ・・・新しい世界を産み落とす混沌となるでしょう。





***
 
拍手お礼SSでした。ミサちゃんがよく解ってないときに書いたものなので詳細おかしいです。もはやオリジナル…
 この色の字U・エーコ『フーコーの振り子』から。聖と悪の混在と智なるものの源である女のイメージ…ミサって言うより月に近くなった。
 
(→2007.04 Liesさんへ捧げ済み

  






  哀(かな)しい=愛(かな)しい=いとしい
(ミサ→月)



 あ な た を 見 つ け た の は あ た し だ け だ と 。 



   思っていたのに。



 
一番にあなたを見出したのはあの人なのね?なんてこと。なんてこと!
 
してやりたいくらい憎い。あなたをそんなにも憎しみで満たすことのできるあの人、
 あなたを占有しているあの人が。

 あなたはあたしを憎んですらくれない あなたは憐れみすらかけてくれない
 あなたとあたしの間には何も     ない。

 あなたは あたしなんてどうでもいいのでしょう?
 ええ、解ってる。あなたにとって あたしは取るに足りない存在。
 あたしなんてどうでもいいって、あたしが一番よく知ってる。

 愛しています、いとしいあなた。あたしにできることはあるかしら?
 せめてお願い、あなたのお役に立ちたいの。

 哀しい、愛しい。 いとしい。






***
 怨念っていうか・情念溢れる演歌の世界になりました。
  (→2007.04 Liesさんへ捧げ済み)

  




                      は。
(サユ→月)




 お兄ちゃんが大学のお友達を連れてきた。

 お友達は、リビングに居るあたしやお母さんにはろくに挨拶もしないで
 さっさとお兄ちゃんの部屋へと上がりこむと、何時間も居坐った挙句にようやく出て行った。

 猫背で、クマがひどくて、裸足でぺたぺた歩く貧相な人・・・


「あたし、あのひと 嫌い。」


「なんだ、粧裕。藪から棒に。」
「髪の毛もぼさぼさだし、服もダサいし・・・本当に東応大生なの?」
 お兄ちゃんはふっ、と 笑った。
「ああ、流河のこと?」
 
 その名前すら神経に触って あたしはしかめ面をした。
「よりにもよってアコガレの流河くんと同姓同名なんて、サイアク。」
 おにいちゃんは はは、と笑った。

「名前のことは・・・しょうがないだろ、自分で決められるもんじゃ・・・無いんだから。」
 まあ、フザケタ名前だけどな。
 お兄ちゃんが小さく呟く。何か考え込むように。
 
 何をそんなにあの人について考えることがあるっていうの?お兄ちゃん。
 
 あたしは何だかイライラして、お兄ちゃんに問いただした。

「お兄ちゃん あの人とどういう関係なの?」
「どういうって・・・友達だよ、それ以外に・・・」

「この前 あたしがお茶を持っていったとき」
 あたしは言った。
「何か口論してたでしょ、あの人と。」

 お兄ちゃんの形の良い眉がきゅっとしかめられる。
「立ち聞きしたのか」
 あたしは唇を噛んだ。
 お兄ちゃんはふう、とため息をつくと、優しく笑ってあたしの頭に手のひらを乗せた。

「あのな、僕だって人とけんかすることくらい、あるんだよ」
 

 大きくて、暖かい手のひら。
 大好きな手のひら。大好きなお兄ちゃんの。

「・・・うん・・・」
 あたしはお兄ちゃんに寄りかかった。
「ん」
 まあ、あんなの、気にする必要もない奴なんだから。

 と お兄ちゃんは笑った。


 お兄ちゃんの馬鹿、嘘つき。
 誰ともけんかなんてしないくせに。
 あたしとのけんかすら、小学校以来 やっていないのに。
 おにいちゃんは誰ともけんかなんてしたことなかった、
 誰もいきなり自分の部屋に案内することはなかった、
 おにいちゃんの部屋にあんなに長居できるひとなんて居なかった。


 お兄ちゃんが他人のことを話すときに、
 そんなに憂鬱そうに
 そんなに気がかりそうに
 そんなにひそやかな熱を持って

  
 話すことは、今まで
 
      無 か っ た。


 嘘つきなお兄ちゃんも 貧相なお友達もみんなみんな


「きらい、大嫌い。」



                         本当そんな風に自の部呟いてる自一番いだ




***
 サユちゃん、Lにやきもちをやく。
  (→2007.04 Liesさんへ捧げ済み)

  



 オイディプス。(総一郎の独白)




 私はあの子を殴ったことなど一度も無いが、あの子を抱いたことも一度も無い。
 あの子の
を抱いたことは。
 小さい頃のあの子はいつもただ少し離れたところから私を見つめていた
 玄関で靴を脱ぐ私に 粧裕が一目散に飛びついてくる間
 ただ少し離れたところから微笑を浮かべ

 『おかえりなさい』 と。

 あの まっすぐな あまりにも濁りの無い瞳で。
 あの瞳はいつも私を少し不安にさせる。
 父親だからこそ感じる原初の不安、とでも言おうか?
 愛しくないわけではない、我が子なのだ。そう、確かにあの子は私に属している。
            己と同質であるが故 異質を認められない?のだろうか?
                                       
 そうなのだろうか?

 それでもかつてはこうまで不安を感じることはなかったような気がするのだが
 それともただ気づかぬようにしていただけだったのか





 お前を信じたい、という思いがどこか少し後ろめたいのはそのせいだといい。





***
 息子にまつわる不安に喰らわれつつある夜神父へ捧ぐ。




  


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