本部の事情 〜ゲームの達人編〜
「月くん」
ひょこりと、Lが顔を出した。
「お疲れ様です。一休みしたらいかがですか。」
「ありがと竜崎。」
僕は伸びをした。
最近は、大学の後 本部へ寄って、細かい書類に目を通したり データ作成を手伝う日々が続いている。
確かに…疲れたな。
「気分転換に甘いものでもどうでしょう。」
そう言ってケーキを差し出すLに、僕は苦笑いした。
「僕はいいよ。」
「そうですか。」
もぐもぐとケーキをほおばるLに呆れ、僕は呟いた。
「本当に…ここには娯楽ひとつ無いしな。気分転換には、食べるしかないのかもな。」
「娯楽ですか。」
Lはしばし考え、言った。
「…まあ、そうですね。(月くんのv)ビデオを見たりはしていますが。」
「…何か今、ものすごく悪寒を感じたんだけど。」
「気のせいでしょう。」
「まあ…いいけど…。ビデオか…ゲームの一つもやらないんだな。」
何気ない僕の言葉にLがぴくんと反応する。
「ゲームも…時折ですが、やりますよ。」
「…竜崎、ゲームってのは相手が必要なんだぞ?クロスワードパズルとかクイズブックはゲームの内に入らないぞ??
あ、あれか!独り双六!? 」
「…普通にテレビゲームも嗜みますよ。何なら勝負してみますか?」
「はは、日本の現代っ子にテレビゲームで勝負とはいい度胸だね」
「悪いですが私も腕に覚えがありますよ…高橋名人にも負けません」
は??
「…何だって??」
今、何だか幻の名前を聞いたような…
「いえ…こちらの話です。それより、ただ勝負するのは面白くありません。
どうでしょう、負けたほうが勝ったほうの言うことをひとつ聞くというのは。」
「…面白いね。」
「ではさっそく…。ハード(ゲーム機)やゲームソフトはどうします?」
「………いいよ、何でも。竜崎が普段使ってるやつで。」
「そうですか。では…」
そういってLが出してきたのは。
「PS(プレステ)1?ちょっと古いけど、まあソフトも充実してるしな。いいだろう…」
「いえ。」
LはぱかりとPSのふたを開けた。
…中にはファミコンの差込口が付いていた。
「プレステ イン ファミコンーーーー!!?」
「香港で購入しました☆」
「マジで!?ていうか今時ファミコンかよ!!?せめて次世代機だろ!?」
「ファミコンを馬鹿にしてはいけません。世の名だたるクリエイター達は皆これで育ったのですよ??」
「いや、そりゃそうだけど;僕が生まれる三年前に発売だよそれ;」
「…自信が無いのなら別のにしておきますか?」
「!…いや、受けて立つよ。」
「そう言うと思いました。ソフトはコレです!」
そう言ってLが出してきたのは;
ドラゴ○クエストT。
「ドラ○エー!!?!しかもTって!それこそ僕の生まれた年に発売だろ;」
「詳しいじゃないですか…」
「まあね…って、RPGでどうやって勝敗を分ける気だ!?」
「ふ…そこが素人の浅はかさです。クリアまでの最短時間を競う、それもまた勝負。」
「…マジ!?」
「やってみれば解りますよ…」
「よ…よし、いいだろう…」
ピロリ〜♪
「音楽も安っぽいな…勇者がいついかなるときでも正面向いたままだし。」
「8ビットに文句を言っても始まりませんよ。」
「うあ!復活の呪文を写し間違えた!最初からやりなおしかよ!!」
「ふふ…ありがちな罠ですね」
1時間半後。
「ふう…何だかんだ言って、さすがに初期のゲーム…単純だ。最初の街の真隣に竜王の祠があるあたりは特に。。
ラクにクリアできそうだな。」
僕は軽く身動きした。と、足が機体に微かに当たる。
がち・ボボーーーーーー
「あ」
「…バグりましたね。」
「…こんなゲーム以前の勝負、やってられるかああ!」
僕はコントローラーを放り出した。
***
「触らなければバグることは滅多に無いのですけれどね…埃が入ったのかも…」
「な ん だ そ の 弱 さ。ありえないだろ!?何で触っただけでバグるんだよ!」
「古くなったファミコンはむやみに触らなければ良いのです。PS1だって、CDの読み込みがうまく行かなくなったら立てたりしてみるでしょう?
古くなったテレビは斜め45度の角度で叩くでしょう?」
「いや、それはさすがにやったこと無いな…」
「とにかく使えるものは使いましょう。案外この不便さが楽しくなってくるものです。」
「アウトドアの宣伝文句かよ!とにかくもうこのゲームは嫌だ!せめて他のゲームにしろ!!!」
「お気に召さなかったようですね…;では、好きなのを選んでください。」
…「星を見る人」「スペランカー」「アトランチスの謎」…
「クソゲーばっかじゃないか!!!!しかも絶対僕らの年代じゃプレイしたことないぞこれ!!」
「クソゲーを馬鹿にしてはいけません。 現世界でここまで理不尽な思いを味わえるのはクソゲーくらいです。
かつて、少年たちはクソゲーで忍耐力を養ったのです!!」
「忍耐を養ってるときじゃないだろ!勝負するんだろ!?せめてスーパーマリオくらいにしとけ!!」
「わがままですね…」
「どっちが!?」
「解りました…こうしましょう。ナウなヤングの月くんのために、音ゲーを用意します。」
「(ナ…ナウなヤング…;)音ゲー?ま、まあいいだろう…で、何?ポップンとか?」
「いえ、和太鼓です。」
「それでもマイナーだなオイ!」
…ともかく、勝負は始まった…
「曲は僕に相応しく、クラシックの『新世界』でいかせてもらうよ…」
ドン!カッ!ドン!ドンドン!
「はは、どうだい?700コンボ…!」
「まだ勝負はついてませんよ…」
ふん…負け惜しみだな。しかも『どらえもん音頭』?また、ビギナー向けの選曲だ…
ハア〜〜〜♪
気の抜けるイントロと共に、Lの腕が信じられない動きを見せた。
な…っ
何て華麗なバチさばき…!!
見える…Lの周りに、踊り戯れるドラえもんが…!!
「完敗だ…」
「解りましたか、月君…ゲームとは…技術だけじゃない。心でプレイするものなのです!」
「竜崎!!(じ〜〜ん)」
リューク 『…騙されてないか月?!』
「とにかく負けは負けだ。約束どおり、お前の言うことを何でも一つ聞くよ。」
「それでは…」
Lは、すっと僕の前に立った。
「…また、ゲームの相手をしてくれますか?」
「!…ああ、喜んで!」
*
数日後。
「月くん月くん」
「なんだい?」
「ゲームしましょう。この前約束しましたよね。。」
「ん?ああ…そうだな、いいよ。でもファミコンは勘弁な。」
「ご安心ください。今日はスタンダードにボードゲームを用意しました。」
「はは、オセロとかチェスかい?」
「いえ、脱衣麻雀です。面子は捜査本部の皆さんで。」
「………嫌だよ。何が悲しゅうて男同士で脱衣なんだ!!」
「え…じゃあ脱衣オセロはいかがですか!?」
「聞 い た こ と な い よ !!」
「じゃあ脱イ碁では!!!」
「いいかげん脱衣から脱却しろ!」
「月くん…そんなことにこだわるなんて悲しいです…ゲームとは心でプレイするものですよ」
「こだわってるのはお前だ!しかも思いっきり邪心だろ!!!ええい、この前はまんまと騙された!」
「ああ…月く〜ん!」
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邪鼓さんとのメールから発生したゲームネタ。PSインファミコンは実在しました。北京で見かけたのは1500円くらいだったかな…
「星を見る人」「スペランカー」「アトランチスの謎」…伝説のクソゲーです。管理人のゲーム認識は1980年代で時が止まっております。
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