He is dead, I know.





「火葬」

 ひとつ 

「土葬」

 ふたつ



 「鳥葬」
 「風葬、ああ、自然葬?」


 みっつよっついつつ。


「洗骨」
「散骨?」

「いえ、洗うほうです」
「ああ、あっち…」



 僕たちの会話は、大抵の場合遊戯の延長だった。
 互いに互いの言葉を探る、見つける、引き出す…それは単純な知識の応酬に見えたかもしれない。
 でもぼくたちは至って真剣にこの遊戯に没頭していた、数え上げる、積み上げる、組みあげていく…始まりも終わりも無い言語ゲーム。


「センコツ?」


  松田さんが不思議そうに尋ね、…とたんに、相沢さんが聞くなよ、という顔をした。  ぼくはL-りゅうざき-と共犯者の笑みを交わし、言った。

  う骨、って書くんです。ぼくもよく知らないけれど…、沖縄から東南アジアにかけて広く伝わっていた葬送儀礼のひとつで…

 死後何年かして
が腐り落ちた死体を、綺麗に洗って 壺に納めなおすんです」

 うえ、とえずく松田さんを見て、竜崎がにやりとした。

 お茶の時間に明らかに手抜きのインスタントコーヒーを持ってきたのは松田さんで、
 「インスタントコーヒーってコーヒー豆のミイラってことですよねー」とか無神経な事を言ったのも松田さんで、
 今だって当たり前のように会話に割り込んでくる、僕たちのゲームの邪魔をするこの男に、

 少しは
 仕返し が できただろうか?


「やだやだ、そんなの」
「死んでいたら何も感じませんよ」

 
竜崎がかしゃん、とコーヒーカップを置いて 言った。


 「埋葬なんて しょせんは生きている人間のためのもので、死んだ人間のためのものではありませんからね」












 そう、お前の言うとおり。葬式なんて、埋葬なんて、「彼は死んだ」ということを認識するための儀式に過ぎない。
 ただそれだけのものに過ぎない。



 彼は死んだ
 彼は死んだ
 彼は死んだ






                       … だ か ら ぼ く は お 前 を 葬 っ た り は し な い 。











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 認めたい。認めたくない。








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