こうPart3.〜ャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン〜





 ある晴れた 初夏の午後。

「あれ。母さん、僕の自転車は?」
「ああ、あの自転車なら粧裕が乗って行ったわよ。」

 僕は顔をしかめた。最近僕が乗ってないと思って…
「あいつ…全く しょうがないな。」
 仕方なく古い自転車を引っ張り出すと、リュークが興味深そうに口を出した。

『どっか行くのか月。』
「まあ、ね。」
『せっかく免許ってのを取ったんだ。車で行ったらどうだ?』
「…はは。車、ね。」
 認めたくは無いが、最近 Lのせいでいささか自動車恐怖症気味だったりする。

「すぐそこだからね。わざわざ車を出す必要も無い。」
『どこ行くんだ?』
「図書館。…っていうか、気分転換にちょっと自転車で走りたくてね。」
『ふーん…』


 シャーーー…


 爽やかな風が吹きすぎていく。僕は額に受ける風に目を細めた。

『ご機嫌だな、月。』
「まあね。何せ人間は死神と違って こんな風にしか風を感じられないし。」

 ああ、気持ちいい…

 と 不意に 聞き覚えのある声がした。
 
「ライトくん」

「…?」
「こんにちは」

 見回しても誰も居ない。というか、走行中の自転車と平行しながら声をかけるなんてことは…


「ここですよ」

 ゆらりと高級車が現れた。


 一瞬、自転車ごと倒れそうになる。

「今流行の熱中症ですか?危ないですね。」
ステルスで近付くな!ていうかお前はもう車自体乗るな!


 僕のツッコミに顔色一つ変えずやつは言った。
「お出かけですか?奇遇ですね」 
 本当に偶然か?偶然なのか??

 

「…ああ、図書館までね…」
「よろしければお送りしますが」
いい。お前の車には金輪際乗らない。」
「ミサイルや機関銃は取り外しました。」
それが当たり前の車の在り方だ。もういい、とにかく僕の邪魔をするな。」
「…でも」


 シャー!
 僕はスピードをあげ、車の横を通りすぎた。


「ライトくん!」
 取り合うな、僕は今図書館に…

  どかーん!

 ほどなくして爆音が轟く。


 ……振り向いちゃいけない!と 耐える僕に、リュークが言った。


『おい、ライト。前方注意だ。』

「は?あぁ…あああ!??



 と、パラシュートをつけたLが目の前に降りてきた。



 キキー!!僕は辛うじて自転車を停車させる。


「な…な…」

 あまりのことに声も出ない僕に、Lは無表情に言った。

「…なぜか突然自爆装置が働きました。



嘘だー!っていうか自爆装置は外してなかったのかよ!!?
「はい、念のために…」

 念って言うのはアレか僕を妨害することか!?
 と 頭を抱える僕に、Lは飄々と言った。
 

「困りましたね。」
僕はお前に困らされてるよ
「ホテルまでの道がわかりません」
あ、そう。じゃ、そういうことで」
「待ってください月くん」
「何だい僕は今図書館に向かっているのであってこれ以上お前に付き合ってられないというか付き合いたくないというか」
「送ってください。」
「勝手に帰れ。」


 がしぃ!ミシミシミシ…


「な…」

 自転車のスポークの間に足を突っ込み、車輪を動かせないようにして Lは言った。


「送ってください。」


***


 
「…自転車なんていう庶民の乗り物に乗るのは初めてです。」
「…乗るのか?乗らないのか?それとも僕にケンカ売ってるのか??
「乗ります。」

言っとくけどあの座り方したら絶対に転ぶからやめろよ。
 自転車ってのは運転者の僕にもダイレクトに被害が及ぶんだからな;」
「はい。二人は運命共同体ということですねv」
「…何か引っかかるが、まあそういう事だ。」


 シャー…


「…月くん」
「何」
「お尻が痛いのですが」
「そりゃ、自転車だからね。」
「乗り心地悪いですね。」
「…そりゃ、自転車だからね。」
「確かこれはママチャリというやつでは?」
「……まあ、そうだね。」
意外です。。月くんがこのようなものに乗っているとは。」


 くそ…!屈辱だ…!


「妹が乗って行ってしまったんだよ!僕の愛用してる自転車はジャガーだ!!」
「そうなんですか。」
 Lは大した感慨も見せずに言った。
 こいつ…やっぱり、いつか絶対殺す!

「それはそうと…確か…ここは荷台ではなかったですか?」
「………ああ、本来ならね」
「捕まりません?」
「はは 今更お前の口からその台詞が出てくるとはね。
「私は荷物ですか」
「荷物っていうか…お荷物だよね


 シャー…


「…おい」
「何ですか」
「抱きつくなよ!」
「さし当たって月くんしかつかまる所がありません」
「つかまるのはいい。しがみつくなっての!暑苦しいだろ!」
「私は快適ですがv」
「そりゃ、運転、してない、方は、な!」
「息切れしてますね」
「上り、は、キツイ、んだよ!」

はっ、はあ…

「月くん」
「んっ」
「なかなか扇情的ですよ」


    キキキーーーーッ!


「お前もう降りろ!」
「すいません。ついじっくりと観察してしまいました。
「もうイヤだ!
「じゃあ私が運転します。月くんは後ろで私に思う存分しがみついてて下さい。
「もっとイヤだ!ていうか初心者の後ろに乗れるか、バカ!携帯持ってるだろ!?さっさとリムジンでも何でも呼べ!」


「あっ!月くーん!」


 シャー…


『…月。』
「何だよリューク。お前もちゃっかり乗るんじゃない。」
『俺は重くないからいいだろ。それより何でもっとスピード出さないんだ?』
「…」

「月くーん」

『あいつに追いつかれるぞ』
「…」



  シャー…………



「っ、はあ。やっと…追いつきました。」
「…何だよ。」

 僕は言った。

「お尻が痛くて乗り心地悪くてつかまるところもない自転車なんか乗るな。」

「…リムジンのシートよりも…どんな特別車よりも…、こちらがいいです。」


 

「……………………・知るか。乗るんなら、さっさと乗れよ。」



『何だ。やっぱりあいつを待ってたのか』
 リュークのとぼけた呟きは、聞こえないふりをした。




『…しかし…三時間以上もつかず離れずの距離を保ちながら走り続ける月も鬼だが、それを追っかけ通したLも凄いな…面白!』




 数日後。

 キャンパスを歩いていると、Lの声がした。
「月くん!」
「ああ、りゅ…」

 振り向き、僕は凍りついた。

自転車に乗れるようになりました!さあどうぞ後ろへ!どこへでも送って差し上げますよ!」
「…っ!」

 僕は逃げ出した。

「どうしたんですか!?せっかく迎えに来たのに…」


 ガラガラガラ…!!


 この…っ!補助輪付きの自転車で追ってくるんじゃない!
 新手の嫌がらせか!?


「月くーーーんVv」
「もう だあああああ!」










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 実はこれ 2のおまけ的エピソードで、分離させるか迷いました。。ドライブしてないし!!
 でもどうしても
自爆機能を働かせたかった…!(そんな理由)。 タイトルに一番苦労しました…。 




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