ドライブに行こう!〜恋のアウトストラーダ☆〜
ビルの彼方、遠く霞む富士山までもが見える ある晴れた日。
「いい天気ですね〜こんな日はドライブにでも行きたいな〜」
松田さんが伸びをしながらそう言った。
「松井さん、車好きなんですか?」
「うん。そういえば月くんもそろそろ免許とか取る頃じゃないの?」
「そうですね…父と相談してみます。」
「局長は大型も運転できるくらい(page.23「激走」参照)だし、車に関しては簡単に許してくれそうだけどね〜。」
「はは。(…そういや父さん、大型の免許なんて…持ってたっけ?)」
そこまでは何気ない会話だった…が。
「…………月くんも車に興味があるのですか」
「え」
出たな、L…。
僕は意識的に模範回答を口にした。
「そりゃ、かっこいい車とか見ると。でもまだ経済力も無いしね。」
「そうですか」
「うん。」
「…」
「……」
「………」
…おいおい。会話のキャッチボールが成立してないよ?竜崎。
「な 何か考え始めちゃったみたいだから僕たちはあっち行こうか…」
松田さんがあわててフォローする。
そう。始まりは、何気ない会話だったんだ…
*
だから、まさか。次の日に。
「月くん。二人っきりで ドライブしませんか。」
Lがこんなことを言ってくるなんて、夢にも思っていなかった。
「…………・は?」
…何を考えてるんだこいつは…
どうしてそう 投げっぱなして無くしたボール(話題)を今更返してよこすんだ!!
しかも変化球で!
軽い頭痛を感じながら、僕はさりげなく話題を逸らそうとした。
「……流河…いや、竜崎、免許なんて持ってたんだ。」
「はい。」
…免許?
待てよ…こいつが持っているとすると国際免許…免許証に本名や国籍が記されているはず…
僕は笑みを浮かべた。
「…ドライブ?いいね…行こうか。」
ガレージに用意されていたのは、マツダのRX8 ワインレッド。
「…もしかしなくても新車?」
「はい。さっきそこで買ってきました。」
スーパーで大根買う主婦か!このブルジョアめ!(お前もだ月。)
「車はともかく、運転のほうは大丈夫なの?」
「任せてください。パリ・ダカールで準優勝経験があります。」
「いや、そんな超速度で荒野走るわけじゃないから;普通に走ってくれればいいんだよ。」
「もちろんですとも。」
車は緩やかに滑り出した。流れる街の風景を見つめながら、僕は一心に免許証のことを考えていた。
あからさまに「見せろ」と言うとキラっぽいか?いや、国際免許なんて珍しいものに全く興味がありません、
なんていうのも胡散臭い…
「っておい!なんでいきなり右側走ってるんだよ!!?」
「あっ☆すいません、イギリス時代が長かったもので…」
「嘘吐くな・イギリスも車は左側通行だろ・」
「そうでしたっけ?」
…くっ、騙されるな月!これは運転スタイルを隠すための罠だ!こいつの運転スタイルに何かヒントが隠されて…隠されて…
「ちょっと待った!運転席で体育座りだけはやめろーーーーーー!!!!」
「この座り方でないと推理力が40%…」
「推理力は通常でいいから;今は命の方が大事だろ ほらブレーキ踏んで!」
「あ…でも今停まるのは危険です」
「なんで!?」
「首都高入ってますから。。」
いつの間にーーーーー!!?
「ETC付いてますから、料金所で一時停止する必要無いんですよ・」
「そんなハイテク説明はいいからスピード上げろ!車線も変更しろ!早く、合図!!」
「はい」
グーーーーーン!!!
「スピード上げました。」
「おま…Gかかってるぞこれ!何キロ出してる!?…250!?冗談じゃない!」
「ドイツのアウトバーンは法定速度無制限でしたが…」
「お前がドイツ人だろうがなんだろうがここは日本なんだよ!」
そうして、Lの運転に逐一口をはさんでいる間に。
・・・気がついたら 関越自動車道を経て、東北自動車道に入ってしまっていた。
「いつの間に…(呆然)」
「あっ 月くん、きりたんぽの看板ですよ♪」
「うるさいよ。
どこでもいいからどっかで降りろ!北海道まで行く気か!?」
「それもいいですね。 報われぬ恋人たちが逃避行で向かうのは北…と相場が決まっておりますしv」
「よくないよ。ていうかその後のセリフは何!?」
「もう一度聞きたいですかv」
「…いや、いいよ。真剣にいい。」
東北地方に入ったとたん、雲行きが怪しくなってくる。
「昼だってのに何だか暗いな…ライト付けろよ。」
「はい」
かち☆ ウウィーン…
「そりゃワイパーだろ! (…ぶち。)
お前ホント免許持ってるのか!見せろ!僕に見せてみろ!!!」
「えっとこちらに…」
「余所見はするなーーーーーーーーー!!!指示してくれれば出すから!」
僕はサイドボードの免許証を取り出し、食い入るように見た。
タナボタ的なきらいはあったが、これで本名の手がかりが掴めるかも…!?
そして早いとこ こいつを殺して車を停めないと僕の命が危ない。
…免許証のサイン欄には大きく「L」と書かれていた。
「マジに免許なのかこれー!!!」
「失敬な…!ちゃんとタイのカオサンロードで4万円ほど出して買い求めた本物ですよ!」
「免許は買うな!取得しろ!!」
「そんなことに時間を費やしている暇はありません…物事はシンプルであればいい…」
「いや明らかに関係ないだろそのセリフ!」
「大丈夫です。対人用も含め、保険の方はバッチリですから。」
「何が大丈夫なんだ!?余計不安だーーーー!」
そして僕はあることに気づいてしまった…
先ほどからリュークがやたら笑っているのだ…
『クククククククククククク…』
「ク」がやたら多い…まさか…今日が僕の命日!?
そ そんな!まだ新世紀の神になるという野望も叶えていないのに!
まさかLのやつ…僕がキラだと知ってこんな無謀なドライブを!?
「ぎゃああああああ!誰か停めてーー!」
「だんだん楽しくなってきました♪」
…ああ、父さん 母さん 粧裕……さよなら…
遠のく意識の中、僕は思った。
もしも生還できたら、きっと 教習所に通おうと。
その頃。
『広くていい車だなー。快適v』 …リュークは、ただご機嫌なだけだった…
…その日、僕たちは津軽海峡を渡った…
*
「…父さん…僕、免許取ろうと思うんだけど…」
「何だ?月。いきなりどうした、青い顔して…」
*
「♪」
「ご機嫌ですね、L。」
「ドライブとは楽しいものだな、ワタリ。次は月くんと峠を攻めに行くぞ☆」
「それはそれは。」
「楽しみだv」
…月の受難は続く…。
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アウトストラーダは実質速度無制限と名高いイタリアの道路です。
タイで本物の国際免許を買えるという話は本当らしいです。よいこのみなさんは教習所に通いましょうねv
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