Hand phone Panic!
「ああ、そうだ、流河。」
講義室を出るとき、僕は 何気なく言った。
「携帯の番号を教えてくれないか?お近づきのしるしに。」
「…」
Lは無言のまま唇を噛んだ。
…警戒しているな。僕がキラだと仮定すると 携帯の番号一つといえど命取りになるかもしれない、とお前は考えているんだろう?
僕は微笑んだ。
「僕の番号から教えるよ。着信したら、その番号にかけ直してくれれば良い。」
こう言えば まさか、イヤとは言えないだろう。
「…はい。」
ことさらにのろのろした手順で、Lが僕の携帯を鳴らした時。
僕はまさか、あんなことになるとは思っていなかったのだ…
*
チャララ〜♪
Lだ。
設定着メロは「名探偵コナンのテーマ」。…勿論、「幼稚な名探偵」を皮肉ったつもりだ。
「もしもし、夜神くんですか」
「…ああ、何だい流河。」
何だ?…何を探るつもりだ…?
「実は、お伺いしたいことがありまして。」
僕は素早く頭を働かせた。
「長くなりそうなら明日にでもじっくり聞くけど。」
「いえ、すぐ済みます。」
Lは言った。
「産業革命の頃、蒸気機関車を作ったイギリス人は誰でしたっけ。」
「…………・は?」
「ですから、蒸気機関を。」
「………スティーヴンソン??」
「ああそうでした、思い出しました!さすが夜神くんですね 有難うございます!」
ぷつ・
…・何なんだ…何かの意図が隠されているのか?
しかし蒸気機関とキラの間に何の関連も見出せないまま、二時間後。
とりあえず着メロを「汽笛」に変えてみたものの…解らない。。
『…変える意味あるのか??』
「どんな些細な糸口でも見落とさないことが大切なんだよ、リューク。」
シュヴォ〜〜〜〜♪
…奴だ!
「もしもし、夜神くん」
「何だい流河。」
「実は今、ちょっとしたことで困っているのですが」
「…困って…?」
「ええ、夜神くんの力をお借りしようかと…」
「・・・・・・・・・・・・さっきみたいな質問なら、父や松田さんに訊いてくれよ」
「いえ、この問題はあなたでないと判りません。」
Lは一息ついて、言った。
「笑点のピンクの人、何て名前でしたっけ」
「………・・好楽?」
「ああ、そうでした!さすが夜神くんです!絶対見てると思いました、ありがとうございました」
ぷつ・
………僕は蒸気機関と好楽とキラの相関性について考察したが、やはりわけがわからない。
「一体何なんだ…」
大体、僕なら 絶対見てると思った とはどういうことだ!?
「笑点」なんて、あんなマイナー番組、この僕が見ているわけは無い。
そう、ノートを拾ってからは忙しくなって さっぱり見ていない。
「お江戸でござる」は欠かさず標準録画しているが、それだって「道中でござる」に変わってからあまり見れていないのだ。
それにしても、あいつは判ってないな…
「笑点」の話題で日本人っぽさを醸しだそうとしたのかもしれないが、好楽師匠を「ピンクの人」呼ばわりする位では、まだまだだ・・・。
『こ…こだわるな、月…俺には正直よく判らないが…』
「はは、笑いは高度に知的な生物である人間のみに与えられた特権だからね。リュークは判らなくて当然だよ。」
『そっかあ〜(納得。)』
一時間後。
〜チャンチャカスチャチャカ☆スッチャッチャ♪(笑点のテーマ)
…今度は何なんだ…
「もしもし、夜神くんですか。」
「…そうだけど、お前一体…」
「すいませんが至急お聞きしたいことがあるのです。」
「またか!!」
「お手間は取らせません。些末なことです」
「なお悪い!小さなことでいちいちかけてくるな、うっとおしい。」
「ああ、すいませんそれでは言い直します。アイデンティティ崩壊の危機です。助けてください。」
「またいきなりおおごとになったな;…何。」
「ダバダバダ〜 ダ〜バ〜ダ〜ダバダバダ〜♪という曲の名前は何でしたっけ。。」
「………………・・『男と女』…?」
「ああ!そうでした!先ほどからこの曲が頭の中で回ってしょうがなくて、危うくノイローゼになるところでした☆
有難うございました。夜神くんのおかげで助かりました。」
ぷつ・
「何だ!?何なんだ!!?試されてるのか僕は!?」
『何の関係も無いんじゃないのか…』
ダバダ〜♪
一体、あいつは…
ダ〜バ〜ダ〜ダバダバダ〜〜〜♪♪
「…ていうか、僕まで『男と女』が止まらない!!」
…あいつめ…!コレは何の罠だ!!?
更に一時間後…
ダバダバダ〜 ダ〜バ〜ダ〜ダバダバダ〜♪♪
「奴だ!!」
『結局また変えてるんだもんな、月…』
「煩い、こういうのはとことんまで聞き飽きたほうがいいんだ!」
…結局その日は、数時間おきにLから電話がかかってきては 何でもないことを尋ね、切る という新手の嫌がらせが 夜まで続いた。
*
「何なんだ本当に…」
…既に、Lからの着メロは「サイレン」である。
こうも度々かかって来ると、本気で襲撃されてるみたいだ…
くそ…明日にでも問い詰めてやる…
今日は疲れた…
「おやすみリューク…」
『おお』
ウゥ〜〜〜〜…
…敵襲!
僕は素早く枕元の携帯を取るとほふく前進の構えを取った。
(←単にうつ伏せになっただけ。。)
「もしもし、夜神くん…」
「夜中の三時だぞ!いいかげんにしろ!」
「すいません。でも、至急夜神くんに用事が…」
「…今度は何だ!?」
「眠れないのでお話してください。」
「永 遠 に 眠 っ て ろ 」
ぷつ・
僕は布団を被った。
ウゥ〜〜〜〜…
…しまった…電源から切れば良かった…
僕は仕方なく携帯を取った。これで最後だ、と自分に言い聞かせて。
「あのなあ…」
「あ、夜神くんv」
「…・」
あのなあ・・・何でそんなに嬉しそうなんだよ。
僕は怒ってるんだぞ。
「…流河…」
「はい!」
「夜中の電話は迷惑だから、止めろよ。」
「…はい。」
だから、何でそんなに
僕の言葉ひとつに
いちいち反応するんだ。
そして何で僕はそのひとつひとつの反応にこんなにも動揺しなきゃならないんだ。
「…眠れないのか?」
「はい。夜神くんに話をしてもらいたくて。」
ああ、本当にこいつは、どうしようもない。
僕はため息をついた。
「…仕方ないな…今日だけだぞ。」
「はい!」
「で、何の話をしたいって?」
「いえ、会話ではなく 夜神くんにお話してもらいたいのです。」
「…具体的に言えよ」
「そうですね…マイフェイバリットはグリムですが、この際日本昔話でも良しとしましょうか。」
「そういう〔話〕かよ!しかもずいぶん上に立った物言いだなオイ!」
*
「…そして一寸法師は、お姫様と末永く幸せに暮らしました。めでたしめでたし。」
『…結局付き合ってやってるんだもんな…』
「成る程。日本昔話のパターンには貴種流離譚が多いのですね。大体の傾向を把握できました。」
「何でもかんでも類型化してしまうのはどうかと思うよ、一寸法師はどちらかというと立身出世譚だろう
…じゃなくて流河。もう五時だぞ!?いい加減に寝ろ!!」
「まだ眠くありません」
「僕が眠いんだよ!もう寝る!今度邪魔したら携帯変えるぞ。」
『…微妙に後ろ向きな対策だな…』
*
次の日。冷ややかな面持ちを崩さぬ僕の前で、Lは悪びれずに言った。
「すいません。実は、番号登録の仕方がよく解らなくて。」
「…」
「履歴が消えては困るので、消えそうになる都度かけてしまいました。」
……それで、あんな下らないことをわざわざ………
…この…アホめ…!
「…ったく…」
僕は、Lの携帯を取ると、僕の番号を登録した。
「これでよし。」
「…ありがとうございます。」
心なしか残念そうなL。
僕はもう一度Lの携帯を取ると、カメラ機能で僕を撮った。
パシャ☆…
その画像を登録し、携帯をLに返す。
「…これで、僕からの電話にこの映像が出てくるからな。」
「え…!」
「イヤなら消せ!」
「とんでもないです…!」
ふん。お前なんかじゃ出来ない芸当だろ。
僕はそっぽを向いた。
*
一時間後。
チャララ〜♪(←コナンのテーマに戻った)
「何だ?流河…」
しかし、コールは一回で切れる。僕は仕方なくかけなおした。
「もしもし?」
「あ、本当に夜神くんの画像が出てきました♪」
「………………」
ぷつ・
僕 は 電 源 か ら 切 っ た 。
それからしばらくの間、Lのワン切りが続いたのは言うまでも無い…
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いろいろありえないですが、たまには報われてるLを。月にかまってほしいLと、何だかんだでLに甘い月。
…Lは携帯を使いこなせないと思う。というか、使いこなすことに興味が無いと思う。
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