「流河!」


 小走りに駆け寄ってくるあなたの息が整うのを見計らい、私は言った。

「初めて声を掛けてくれましたね。」

 秀麗な目元をわずかに歪ませながら、あなたは言った。
「そうだっけ?」
「はい。」

 あなたはいつもいつも、私が声を掛けるとそうして少しばかり煩わしそうに目を逸らす。

「あの女性ですか。」
「あ、解ってた?はは。」
 乾いた笑いの向こう、ひとり 取り残された女性が複雑な表情でこちらを眺めているのを見落とす私ではなかった。


「何かさ、やばい予感がしたから。」
「やばい とは。」
 あなたは肩をすくめながら言った。

「告白されそうな感じ。」
「…大した予見力ですね。」

「解るよ、それくらい。」
 慣れてるし。と言わんばかりの口調。
「流河だって人を好きになったり…愛したり、愛されたりしたことくらいあるだろう」
 私はちょっと考え 答えた。

「そんな風に人間の感情を判断しなくなって久しいですから。」

「へえ。」 

        あなただって 同じでしょう?
        好きだとか嫌いだとか 愛だとか恋だとか、そういった世俗的な感情はあなたには無縁に思える

   
 
「……かわいそうなやつだな。」



 返って来た 思いもかけない言葉に、私はほんの少し 目を瞠る。

「それは哀れみというやつですか」
 あなたは微笑する。

憐れみ という言葉は、 するに足る という意味だよ、流河。」


         ああ、それでも (それだから?)あなたの唇から洩れ出づると その言葉はまるで違う響きを持つのですね


「それはいい。では   してください。」

 真顔で言う私に、あなたはくすくすと笑った。


 そうしてまたあなたは誤魔化してしまうのですね 
 私は本気で答えたのに。
 

          そう いつだってあなたは独り どこまでも独り 深淵を見詰めて


 本当に、あなたを見ていると、ある童話を思い出しますよ。


     『誰からも愛されるように生まれついた子は誰も愛することはできなかった』


 たはってからもれな 一生誰もることはでききていくのでしょ









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 アンデルセンの童話だったかな…。 
 誰からも愛されるけど誰も愛することができない運命の男の子の話がありました。 ラストが泣けるんですよ…

 ←とある方が、「ヘッセの『メルヒェン』ではないか」とコメントして下さいましたvご教示ありがとうございました!!














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