*Pekoさんへの捧げものv
オーストラリアGoGo!
ぼくが捜査本部に加わって間もない、ある朝のこと。
*
…寒い…
ぼくは寝返りを打った。冷気で覚醒しはじめた意識に、モーター音が追い討ちをかける。
…モーター音?
おかしい。ぼくは思った。クーラーをかけっぱなしで眠るようなことはしていない。それにこの音、モーター音にしては大きすぎるような…
薄く目を開けた…とたん、Lの顔が鼻先に迫っているのに気づき いっぺんに目が覚める。
「うわあああああああ!!!!」
ぼくは慌てて枕でLの顔をブロックしながら叫んだ。
「おふぁようほはいはふはいほふん(おはようございます月くん)。いい朝ですね!」
「……・お前のせいでぼくは最悪な目覚めだけどね」
ぼくの皮肉をものともせずにLは言った。
「ちょうどよかった、もう起こそうかと思っていたところですよ」
「起こそうかと…って…なんでお前がここに居るんだ!!」
「なんでって…私のチャーター機ですから。」
「お前のチャーター機だろうがなんだろうが人の寝起きを…え??」
なんだって??
と あたりを見回すと、確かにそこは見覚えの無い一室だった。
シンプルだが趣味の良い装飾が施された部屋にはシートベルト付きソファに大型スクリーン、隅のほうにはカクテルコーナーまで設置されている。
「そうか、ここはお前のチャーター…き…」
チャ−ター機?
『よーライト。すげーぞ、このヒコウキっての!!』
……はしゃぐ死神に、思わずくらりとよろめく。
「チャ−ター……飛行機!?!」
「はい。コンコルドをチャーターしました。日帰り旅行なので安心してください。」
「マッハ2でどこに日帰りだお前!」
フッ、と笑ってLは言った。
「逸る気持ちを抑えられない恋人達にとっては音速の翼すら鈍いということですね月く・ぐふウ!」
「ど・こ・に・行・く・ん・だ・?」
「ら…月くん、みぞおち入ってます…」
「狙ったからね」
「首…絞まってます…」
「絞めてるからね」
さあ言え!と力を込めるとLは言った。
「うぐ…お、オースト…ラリアです…」
ぼくは手を緩めた。
「……ふうう、危うく目的地の前に天国に到達するところでした……
しかし月くんの端正な顔を間近で鑑賞できたのでまあよしとしま「オーストラリア…!?」
Lのつぶやきを、ぼくは打ち消した。
っていうか何でオーストラリア????
げほ、と喉を押さえながらLは言った。
「はい。コアラお好きでしょう?触ってみたいと仰っていたので……」
「コアラ……?」
あ。
ぼくは思い返した。
そういえば、一昨日…
『松田さん…本部のモニタで『ドキワク動物ランド』見るの止めていただけませんか……』
ため息を付きながら松田さんに注意するLを見て。
『あっ はいすいません、その……ほら、可愛いですよね動物って心癒されますよね!』
『あいにく有袋類に癒しを感じるほどおちぶれてませんので』
冷たく言うLに向かい、
『まあちょっとくらい、いいじゃないか。ぼくもああいうの好きだよ。
一度でいいから抱っこしたりしてみたいよな、はは』
などと 言ったかもしれない…!
しかしあれは場の雰囲気を保つためであって、まさか本気に受け取られるとは思わなかった。
ていうか。
っていうか!!!
「それだけのためにコンコルドをチャーターするなーーーー!」
叫ぶぼくに、Lは呟く。
「心外です、私はただ月くんの喜ぶ顔が見たいと思って…」
「そうですよ月くん!せっかくの慰安旅行なんですから楽しみましょう!!」
「松田さんーーー!?居たんですか!!?」
驚くぼくに、竜崎はぼそりと呟く。
「松田さんは夜神さんに頼みこんで同行を許可させてもらったそうです。…チッ」
「竜崎と月くんだけでは心配だから保護者です☆」
「ははははははははははははははははははは面白い冗談ですね松田さん★」
「ら…月くんあの、あの、目が怖い…」
「!そうだ、父さんや相沢さんたちはどうしたんだ!?」
「『日帰りで海外はちょっと辛い』そうなので、豪華温泉&ゆったりマッサージの旅に御招待いたしました」
「誰だって辛いよ!冗談じゃない、ぼくも帰る!」
「え……っ、月くん、そんな……!」
「海外なんて日帰りで楽しむもんじゃないだろ。
大体こんなの、旅の情緒も何も、あったもんじゃない。」
ぼくは言った。
「旅行ていうのはもっと、こう……行き先からいろいろ、考えたりするところから始まるだろう?」
知らない間に目的地に着いて、はい着きました、とりあえず何か有名なものを見ました、時間なので帰りました…じゃなくて。
こういう交通手段で、途中に何があって、こういった由来のものを見て、どうしてそこにそれがあるのかを知って。考えて。
「月くん……」
「だから、そうだな……いつか、時間がもっとできたら」
一緒に考えよう。どこに行きたいのか、何を見たいのか、どうやって行くのか。
……二人で。
*
ワタリに帰国の指示をするLの後ろで、松田さんががっかりしたような声を出した。
「えー帰るんですか、もったいない…」
『えー帰るのか月、もったいない…』
シンクロするなリューク!と 目線をくれてやると、リュークは黙った。しかし……
「月くん、竜崎、やっぱりもったいないですってばー
思い直しましょうよ、ホラ、ほんのちょっと楽しんで帰ればいいじゃないですか!」
「松田さん…」
往生際、悪!!!
諦めの悪い松田さんに対し、Lはふううと嘆息して言った。
「仕方ありませんね…確かにもったいないので、松田さんには特別休暇ということで楽しんできてもらうことにしましょうか」
「えっ い、いいんですか竜崎っv」
「ええ、よろしいですよ。以下の中から選んでください
@エアーズロックで綱無しロッククライミングコース
Aアボリジニとの晩餐〜芋虫のフルコース〜
Bタナミ砂漠で遭難アドベンチャーコース
どれがよろしいですか??」
「り…竜崎、あの…A以外は生命の危険を感じるのですが…っていうかAもイヤすぎるんですが…!!」
「安心してください、いざというときのために保険はたくさんかけてありますから」
「ああそれは安心だな」
「安心できない!!それ全然安心しない!!!!!」
い…いやあああああああ!!!!
……松田さんの叫びは、美しく澄み渡る空の下に、響きわたったような気がしなくもなかった……
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随分前にPEKOさんに「うちに飾っていい?」って訊いたら快くOkしてもらえたのだが・その後発掘できずに埋もれてたもの。
実はラストにPEKOさんあてのメッセージが入ってたのですが、その部分含めちょっと修正。。
この後、『捜査本部の皆さんで温泉〜』編に繋がるというわけです。
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