ルール1・じゃんけんで、負けたほうが鬼になって 勝ったほうを追いかける
ルール2・いよいよ鬼に追いつかれそうなときは足で円を描いてその中に入れば助かる
ルール3・円の中に入ったら、誰か味方に触れてもらうまで そこから動けない




『わかった?さゆ。』
『うん』
 幼い粧裕はこくんとうなずいて それから少し首をかしげた。


『お兄ちゃん、あのね』
『何だよ』


『何でじゃんけんに負けたほうが 追いかけるの??』




                                         ール



 真夜中に、目が覚めた。

 僕は暗い部屋の中 咄嗟にノートのある机を確かめる。何も変わりは無い、当たり前だ。そう、何もない。明日は早い、眠らなければならない。
 横になって目を瞑ってもなかなか眠気は訪れてはくれない。
 先ほどの夢の断片を思い返す。

 …随分、昔の夢を見たものだ。
 あの頃 粧裕はまだ小さくて、どこへ行くにも僕の後を付いて来てた。僕は少しばかり決まりの悪い思いで 遊び仲間にみそっかすの妹を紹介したものだ。 

『何で勝ったほうがこわいおもいをするの?』


 夢の中、あどけない妹の疑問。
 
 現実的には 追われるのは敗者であるべきで、追跡するのは勝利者であるべきだろう。しかし遊戯の世界では、このルールは逆さになる…

 逆さまな遊戯。正義が悪とみなされる…

 退屈しのぎに始めた遊戯は、いつのまにか Lとの鬼ごっこになっていた。
 命を賭けた遊びは 今のところはフィフティ・フィフティ。
 …けれど、そう。わかってる、次第に僕は劣勢となりつつある。
 だからこそ僕は この状況に別れを告げるのだ。
 もうすっかり見慣れた死神と 手に馴染む死のノートの感触と 別れるというのは、何だか奇妙に現実感が無かった。
 でも僕はもう決めてしまったのだし、劣勢をひっくり返すにはこれしかない。

 そう、遊戯を終わらせるにはまだ早い。

                            (僕はもっと楽しみたい。僕はもっと遊びたい。)

                
 だから僕は一歩引いてみよう。死線ギリギリ、一歩引いて、そしてダイヴ。
 目指すは最良の安全地帯。そこにいる限り、誰も手を出せない類の禁域。

 そう、L。お前の隣へと。

 しばらくはここで、お前の一人遊びを傍観していよう。力を蓄え、またお前と対峙できるよう。
 お前は指をくわえて僕を見るだろう。誰よりも近くて遠い存在を。





 そこは、最 の。









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 アジール:Asyl(独)、Asile(仏) ...中世ヨーロッパで犯罪者が逃げ込んだ、世俗の力が及ばない領域。避難所・平和領域。
 鬼ごっこのルールは地方ルールです。こおりおににしようか、迷った…。『投身』直前くらいで。













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