き出しか






 久々にまともな時間に家に帰れる、と ホテルのエントランスで伸びをすると
 遥かにそびえる摩天楼の一角、捜査本部となっているLの部屋が見えた。

 あの部屋の明かりが消えているのを見たことは無い。

 Lは一体いつ眠ってるんだろう、と思う。
 今回の事件は酷く難航している。今回なんて言っても、次回があるかどうかすら分からないけれど。

             (例えば、宇生田さんは…?)

 ぶるり、震える。

 殺しの手段すら判っていない、そんな相手を捕まえるなんて雲を掴むような話だと思う。
 誰だってそう思うだろう。僕だって、神の仕業で片付けてしまいたい所だ。

 神の仕業。

  わるいやつにはてんばつがくだる。かみさまはね、わるいやつをゆるさないんだよ。


 刑事になろうと思ったのは、そんな風に無邪気に信じていた自分への、せめてもの
        
            (開き直り?言い訳?それとも…慰め?)

 でも僕の力はあまりに微力で。

 宇生田さんが倒れたのをテレビ越しに確認したとき。
 情けないくらい何もできなかった。
 Lにくってかかる相沢さんを、怒りに震えるLを、見てることしかできなかった。

 これは神じゃない。こんなのは神じゃあない。空ろな胸に そう繰り返しながら、僕はただ。



 僕はLほど頭脳明晰ではないし、局長みたく経験があるわけでもない。
 宇生田さんのような迅速さも、相沢さんのような勇気もない、僕には何の力もない。

 自分の無力さに失望する。

 でもLは、少なくともLは、何かはっきりしたものを見据えているみたいだ。
 僕にできるのは、だから、ただ指示に従い働くこと。動くこと。
 僕はあの人の盾となろう、剣となろう。

 
             たぶん、僕は、そうすることによってまた 自分を慰めてるんだろう。







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 松田さん好きです。一応エリートでしょうに、哀しいくらい一般人を感じさせるところも大好きです。
 怖い怖いと言いながら、覆った指の隙間から ホラー映画を見てしまうタイプではないかと。
 





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