悪夢のような現実に。
モニタに映る息子の姿は日々やつれ 荒んでゆく。
まだできあがっていない華奢な体を冷たい床に横たえるあの子を見て気付く、少し背が伸びたのではないか?
幼いと思っていた顔つきもやや精悍になったようだ、いつの間にかあの子は成長した、大きくなった。
久々の父親としての実感が まさかこんな形で得られようとは。
私は時折夢想する。
光の下で あの子はどんなにか健やかに美しく見えることだろう。それを、私はどんなにか誇らしく思うことだろう。
だからこそ今こうして囚われている息子がどうしようもなく痛々しい。
私は時折夢想する。
このどうにもならない膠着状態を打破するには。
息子はキラであるかもしれない、かもしれない息子は未だキラではない。
全てが曖昧で不確定なままで済む今の内に
息子を殺し
息子を疑う竜崎を殺し
最後に自分を殺してしまう
…のが
最良の方法ではないかという夢想、ほとんど発作にも似た。
それが一番正しい選択ではないのか。少なくともこの現実を変えるには。
−ソウデハナイノカ?−
発作にも似た、とめどない狂気と共に歩み寄る 背を向けた竜崎の首
は
思ったより細く白く 陽に焼けていない頼りなげな首筋に時折青白い血管が浮き出る、画面の向こう 息子のうなだれた首にも似て。
この細さはこの白さはこの頼りなさはこれはこの首に手をかけたなら全ては。
「竜崎」
私は
言った。
「私をこの捜査本部からはずしてくれ」
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「Page.35 白紙」より。私情に負けそうな夜神父をお送りいたしました。
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